117C024|第117回 歯科医師国家試験 過去問
82 歳の女性。上下顎全部床義歯の製作を希望して来院した。5 年前に左側下顎 歯肉癌で、下顎区域切除術と腹直筋皮弁を用いた即時再建術および放射線治療が施 行されたという。診察の結果、義歯を製作することとした。初診時の口腔内写真 (別冊No. 4A)とエックス線画像(別冊No. 4B)を別に示す。 適切な対応はどれか。3 つ選べ。

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正解: a・c・d
正答
a、c、d
この問題のポイント
下顎区域切除後の顎義歯では、下顎の患側偏位、再建軟組織の被圧変位、筋圧との調和を考慮します。
解説
下顎区域切除後は健側筋群の作用が優位となり、開閉口時に下顎が患側へ偏位しやすくなります。上顎義歯にオクルーザルランプを付与すると、閉口時に下顎を適切な咬合位へ誘導できます。
再建後は通常の解剖学的位置に人工歯を置くと頬・舌の力で義歯が不安定になることがあるため、ニュートラルゾーンを利用します。咀嚼は支持と運動が比較的安定した健側を主体に指導します。皮弁部は軟らかく損傷しやすいため、加圧印象は避けます。
治療選択のポイント
顎切除後は、欠損側への偏位を誘導装置で補い、人工歯排列は筋圧との均衡域に設定します。放射線治療歴があるため、外科的侵襲を伴う処置は慎重に判断します。
画像の確認
実画像では、下顎左側の広い区域が厚い皮弁で再建され、パノラマ像には下顎骨の連続性を再建する長いプレートが写っている。左右非対称な支持域と可動性のある皮弁を踏まえ、健側主体の咀嚼、ニュートラルゾーン排列、上顎オクルーザルランプを選ぶ正答a・c・dを支える。
選択肢の確認
a.健側を主体とした咀嚼方法の指導
正答。適切です。
健側は支持・運動機能が相対的に保たれ、健側主体の咀嚼は義歯の安定と安全な食塊形成に役立ちます。
b.右側下顎骨へのインプラントの埋入
この条件では適切ではありません。
インプラントは選択肢となる場合がありますが、高齢、再建骨、放射線治療歴などを踏まえると本症例で直ちに行う標準的対応ではありません。
c.ニュートラルゾーンへの人工歯の排列
正答。適切です。
ニュートラルゾーンに人工歯を排列すると、頬・舌・口唇の筋圧が義歯を安定させる方向に働きます。
d.上顎義歯へのオクルーザルランプの付与
正答。適切です。
上顎義歯のオクルーザルランプは、偏位する下顎を閉口時に適切な位置へ誘導します。
e.皮弁で覆われた顎欠損部に対する加圧印象
この条件では適切ではありません。
皮弁で覆われた部位は被圧変位や損傷を生じやすく、強く加圧する印象は不適切です。
覚えるポイント
- 下顎区域切除後は下顎が患側へ偏位しやすい。
- オクルーザルランプで閉口路を誘導する。
- 人工歯はニュートラルゾーンへ排列し、皮弁部を過圧しない。