115D055|第115回 歯科医師国家試験 過去問
88 歳の女性。部分床義歯の新製を希望して訪問歯科診療を依頼された。10 年前 から手指が振戦し動作が緩慢になったため、治療薬を服用しているという。口腔清 掃時の一連の動作の写真 (別冊No. 15A と使用中の義歯の写真 (別冊No. 15B を別 に示す。 本症例の咬合採得で決定が困難なのはどれか。 2つ選べ。

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正解: b・c
正答
b、c
この問題のポイント
振戦と動作緩慢を示す高齢患者で、再現性のある下顎運動を必要とする咬合採得項目を選びます。
解説
10年前からの手指振戦と動作緩慢、治療薬の服用からParkinson病が考えられます。画像Aでは開口を保てず閉口し、舌で歯ブラシを押し出す一連の動作がみられ、口腔周囲筋の運動調節が難しいことが分かります。画像Bからは現在の上下顎部分床義歯の形態を確認できます。
咬合床を用いて咬合高径を決める垂直的下顎位と、中心位などの前後・左右的位置を決める水平的下顎位は、患者に下顎を安定して保持してもらう必要があります。振戦、筋固縮、無動、反復運動の困難があると再現性を得にくくなります。
症例問題の解き方
神経疾患名だけでなく、どの診療操作が患者の随意運動と位置保持を必要とするかを考えます。
画像の確認
実画像では、開口保持中に閉口し、さらに歯ブラシを舌で押し出す連続動作が示され、上下顎の部分床義歯も掲載されている。再現性のある下顎の保持が難しい可視状況から、垂直的・水平的下顎位の採得が困難となる正答b、cを支える。
選択肢の確認
a.仮想咬合平面
誤り。
仮想咬合平面は顔面の基準線や咬合床の位置を参考に術者が設定できます。下顎位の反復再現性への依存は比較的小さい項目です。
b.垂直的下顎位
正しい。
咬合高径の決定には、下顎安静位、顔貌、発音、嚥下などを統合し、下顎を安定させる必要があります。Parkinson病による運動調節障害で決定が困難になります。
c.水平的下顎位
正しい。
前後・左右方向の顎間関係を正確に記録するには、下顎を再現性のある位置へ誘導して保持する必要があります。振戦や筋固縮があると記録が不安定になります。
d.上顎前歯の位置
誤り。
上顎前歯の位置は口唇との関係、切縁の見え方、発音、審美性などを参考に決めます。下顎位そのものより術者が評価しやすい項目です。
e.リップサポート
誤り。
リップサポートは上顎咬合堤の豊隆や上顎前歯の位置を顔貌から評価して調整します。下顎の随意的な位置保持を直接必要とする項目ではありません。
覚えるポイント
- Parkinson病では振戦、筋固縮、無動・動作緩慢が顎運動の再現性に影響します。
- 垂直的下顎位と水平的下顎位は、安定した下顎の誘導と保持が必要です。
- 顔貌から術者が設定できる項目と、患者の下顎運動に依存する項目を分けて考えます。