115A087|第115回 歯科医師国家試験 過去問
74 歳の男性。義歯の不安定による咀嚼困難を主訴として来院した。上下顎義歯 は 5か月前に装着し、問題なく経過していたが、 3日前に下顎の金属修復物が脱離 してから急に嚙みにくくなったという。診察の結果、下顎右側第一大臼歯は根面板 が脱離していた。初診時の上顎義歯装着時の口腔内写真 (別冊No. 33A 、下顎義歯 の写真 (別冊No. 33B 、義歯装着時の口腔内写真 (別冊No. 33C 及び下顎義歯非装 着時の口腔内写真 (別冊No. 33D を別に示す。 適切な処置はどれか。 2つ選べ。

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正解: a・c
正答
a、c
この問題のポイント
根面板を利用したオーバーデンチャーで、根面板の脱離後に義歯が急に不安定になっています。原因を回復するため、根面板を再製作し、新しい根面板に合わせて義歯床粘膜面を修正します。
解説
症例では、上下顎義歯は5か月間問題なく使用できていました。しかし、下顎右側第一大臼歯の根面板が脱離してから急に義歯が不安定になっています。この時間的関係から、主因は義歯床後縁や前歯部ではなく、根面板を失ったことによる支持・適合関係の変化と判断します。
根面板は、残存歯根を被覆して次の役割を果たします。
- 歯根を齲蝕や機械的刺激から保護する
- 義歯床下の支台として支持に関与する
- 義歯床粘膜面との適合関係を一定に保つ
根面板が脱離すると、その部位に空隙が生じ、他の根面板や粘膜だけが先に接触します。支持点が不均衡になるため、咬合時に義歯が回転してがたつきます。
したがって、まず根面板を再製作し、その形態と高さに合わせて下顎義歯床の粘膜面を削合・追加修理して適合させます。根面板と義歯床が強く当たりすぎず、かつ空隙による動揺も生じない状態に調整することが重要です。
治療選択のポイント
「以前は問題なく使えたが、ある部品の脱離直後から症状が出た」という経過では、まず脱離した構成要素を回復し、それに合わせて補綴装置を再適合させます。
画像の確認
実画像では、上下義歯と装着状態に加え、下顎顎堤上に複数の金属製根面板がみられ、そのうち後方の一歯だけは被覆物が失われ根面が露出している。欠損した根面板を再製し、その位置に対応する義歯内面を適合させる必要があるため、a、cが正答となる。
選択肢の確認
a.根面板の再製作
正しい。
脱離した下顎右側第一大臼歯の根面板を再製作し、歯根の保護と義歯の支持関係を回復します。原因へ直接対応する処置です。
b.下顎義歯床後縁部の削除
誤り。
後縁の過延長が疼痛や浮き上がりを生じている所見は示されていません。後縁を不用意に短くすると支持面積や辺縁封鎖が低下し、義歯の安定をさらに悪化させる可能性があります。
c.下顎義歯床粘膜面の修正
正しい。
再製作した根面板の形態と高さに合わせ、義歯床粘膜面を適切に削合または追加修理します。これにより根面板部での過圧や空隙をなくし、義歯の適合と安定を回復します。
d.前歯部根面板上のリリーフ
誤り。
問題は下顎右側第一大臼歯の根面板脱離です。正常に機能している前歯部根面板上をリリーフすると、その部位の支持を低下させ、義歯の動揺を増やす可能性があります。
e.頰側歯肉部のブロックアウト
誤り。
ブロックアウトは印象採得や技工作業でアンダーカットを処理する際に行うことがあります。しかし、本症例の急な義歯不安定は根面板脱離による支持関係の変化が原因であり、頰側歯肉部のブロックアウトは直接的な改善処置ではありません。
覚えるポイント
- 根面板脱離後の義歯動揺では、根面板の再製作が必要です。
- 新しい根面板に合わせて、義歯床粘膜面を再適合させます。
- 原因部位と無関係な床縁削除やリリーフは、支持・維持を低下させることがあります。