115A083|第115回 歯科医師国家試験 過去問
70 歳の女性。下顎全部床義歯のがたつきによる咀嚼困難を主訴として来院した。 診察の結果、下顎前歯部に 2本のインプラントを埋入することとした。インプラン ト埋入 6か月後の口腔内写真 (別冊No. 30A 、下顎義歯の写真 (別冊No. 30B 及び 上下顎義歯装着時の口腔内写真 (別冊No. 30C を別に示す。 インプラント埋入により向上するのはどれか。 2つ選べ。

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正解: a・b
正答
a、b
この問題のポイント
下顎前歯部の2本のインプラントを利用したオーバーデンチャーでは、アタッチメントによって義歯の維持と把持が向上します。
解説
画像では、下顎前歯部に2本のインプラントとスタッド型アタッチメントが設置され、下顎全部床義歯の粘膜面側に対応するハウジングが組み込まれています。この形式はインプラントオーバーデンチャーです。
補綴学では、義歯の働きを次のように区別します。
- 維持:義歯が顎堤から離脱する方向の力に抵抗する性質
- 把持:義歯の水平的な移動や回転に抵抗する性質
- 支持:義歯が粘膜方向へ沈下する力に抵抗する性質
インプラントと義歯をアタッチメントで連結すると、義歯が浮き上がるのを防ぐ維持力が得られます。また、左右への滑走や回転も抑えられるため、把持も向上します。その結果、下顎全部床義歯のがたつきが減り、咀嚼時の安定性が改善します。
ひっかけポイント
維持・把持・支持を混同しないことが重要です。本問の選択肢には支持がなく、アタッチメントによって直接向上するものとして維持と把持を選びます。
画像の確認
実画像では、無歯顎下顎前方部に二つのスタッド状アタッチメントがあり、義歯粘膜面には対応する金属製ハウジングが設けられている。両者が直接係合して義歯の浮き上がりと横方向・回転方向の動きを抑える構造であるため、維持と把持が正答となる。
選択肢の確認
a.維 持
正しい。
インプラント上のアタッチメントと義歯内のハウジングが係合することで、義歯が顎堤から浮き上がる方向の力に抵抗できます。したがって維持が向上します。
b.把 持
正しい。
2本のインプラントが義歯の水平移動や回転を抑える支点となるため、側方へのがたつきが減少し、把持が向上します。
c.審美性
誤り。
インプラントは下顎前歯部の義歯床下に配置されており、人工歯排列や口唇の豊隆を直接変える処置ではありません。審美性が必ず向上するとはいえません。
d.清掃性
誤り。
インプラント周囲、アタッチメント、義歯粘膜面の清掃が新たに必要になります。構造が増えるため清掃が自動的に容易になるわけではなく、むしろ適切な清掃指導が重要です。
e.義歯の耐久性
誤り。
義歯の安定性は向上しますが、アタッチメント部品の摩耗や交換、ハウジング周囲の義歯床の厚み不足などに注意が必要です。インプラント埋入のみで義歯材料そのものの耐久性が向上するわけではありません。
覚えるポイント
- インプラントオーバーデンチャーは、下顎全部床義歯の維持と把持を改善します。
- 維持は離脱への抵抗、把持は水平移動・回転への抵抗です。
- 装着後はアタッチメントの摩耗とインプラント周囲の清掃管理が重要です。