38Q90|第38回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(88歳、女性)は、4年前に、認知症(dementia)と診断された。在宅で長男が介護している。Aさんは、3か月前から、何度もトイレ以外で排泄{はいせつ}しようとする様子がみられた。長男が繰り返しトイレの場所を教えているが、状態は変わらない。長男はAさんに対して、「何回、同じことを言ったら、わかるんだ」と大声でどなってしまい、その後で落ち込むようになった。また、長男は、「認知症(dementia)がいつまで続くのか」「自分に何か問題があったのではないか」と言って、自分を強く責めている。 次のうち、Aさんの認知症(dementia)を長男が受け入れる過程と考えた場合、このときの長男の心理的特徴に該当する段階として、最も適切なものを1つ選びなさい。
解答・解説を見る
正解: 3
正答
3.混乱期
この問題のポイント
認知症の人を介護する家族が、病気や介護の現実を受け止めていく心理過程を、事例の感情と行動から判断する問題です。
混乱期には、怒り、いら立ち、悲しみ、抑うつ、自責感、将来への不安などが入り混じり、本人への対応と自分の感情の間で苦しむことがあります。
解説
事例の長男は、Aさんの排泄行動が変わらないことにいら立ち、大声でどなった後に落ち込んでいます。また、「認知症がいつまで続くのか」「自分に何か問題があったのではないか」と、自分を強く責めています。怒り、絶望感、不安、自責感が混在しており、心理的に整理できず苦しんでいるため、混乱期が最も適切です。
家族が認知症を受け止めていく過程は、一般にショック期、否認期、混乱期、解決への努力期、受容期などの段階で説明されることがあります。
ショック期は、診断や急な変化に直面し、驚きや動揺で現実を十分に考えられない段階です。否認期は、「認知症ではない」「一時的なものだ」と病気や変化を認めにくい段階です。混乱期は、怒り、悲しみ、抑うつ、自責感などが強くなり、どう対応すればよいかわからず揺れ動く段階です。解決への努力期では、病気について学び、サービスを利用し、対応方法を探そうとします。受容期では、認知症と本人の両方を現実的に理解し、残された力や本人らしさを大切にしながら生活を組み立てられるようになります。
ただし、この過程は一直線に進むものではありません。症状の変化、介護負担、家族関係などによって、複数の段階が重なったり、以前の気持ちに戻ったりすることがあります。
ひっかけポイント
受容は、あきらめたり何も感じなくなったりすることではありません。現実を踏まえ、本人の状態と自分の生活の両方を大切にする方法を見いだしていくことです。
介護実践でのポイント
長男を責めるだけでは支援につながりません。まず疲労、睡眠、孤立、介護負担、Aさんと長男の安全を確認し、つらさを傾聴します。排泄行動については、トイレの認識、動線、表示、時間帯、便秘や尿路症状などをアセスメントします。地域包括支援センター、介護支援専門員、医療職、家族会、通所・短期入所などと連携し、休息を確保します。怒鳴ることが続く、暴力のおそれがあるなど安全上の懸念があれば、速やかにチームで対応します。
選択肢の確認
1.ショック期
適切ではありません。
ショック期は、認知症の診断や大きな変化を知った直後などに、驚きや動揺で現実を十分に受け止められない段階です。事例では診断から4年が経過し、怒り、自責、抑うつが入り混じっているため、中心となる特徴は混乱期です。
2.否認期
適切ではありません。
否認期は、「認知症ではない」「本人は以前と変わらない」などと病気や変化を認めにくい段階です。長男は認知症の存在を否定しているのではなく、続く介護への不安と自責感に苦しんでいます。
3.混乱期
正答。最も適切です。
怒鳴ってしまうほどのいら立ち、その後の落ち込み、「自分に問題があったのではないか」という自責感など、怒り、悲しみ、不安が混在しているため、混乱期に該当します。
4.解決への努力期
適切ではありません。
解決への努力期では、認知症について理解しようとし、支援方法、介護サービス、相談先などを積極的に探して、生活を整えようとする姿が中心になります。事例では、まだ感情の混乱と自責が強く表れています。
5.受容期
適切ではありません。
受容期では、認知症による変化を現実的に理解し、本人のできることや本人らしさを認めながら、支援を生活に取り入れられるようになります。事例の長男は、落ち着いて状況を受け止められる段階には至っていません。
覚えるポイント
ショック期は、驚きと動揺が中心です。
否認期は、病気や変化を認めにくい段階です。
混乱期は、怒り、悲しみ、不安、自責感などが入り混じります。
解決への努力期は、知識や支援を得て対応方法を探す段階です。
受容期は、現実を踏まえて本人らしい生活と家族の生活を組み立てる段階です。
家族の心理過程には個人差があり、行きつ戻りつしながら進むことを理解して支援します。