38Q89|第38回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(75歳、男性)は、認知症(dementia)で、通所介護(デイサービス)を利用している。介護福祉職が、「今日は何月何日でしょうか」と聞くと、Aさんは、「9月」と答えた。介護福祉職が、「今朝、Aさんの家の庭にあじさいが咲いていましたね」と言うと、Bさんが、「あじさいが咲くのは6月?」と答えた。介護福祉職は、「そうです。今日は6月22日です」と言い、ホワイトボードに日付とあじさいの絵を描いた。介護福祉職が、「6月生まれの方はいますか」と聞くが、返事がない。介護福祉職は、「今日は6月22日ですが、あと3日でAさんの誕生日ですね」と伝えた。 次のうち、介護福祉職が実施した技法として、適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.リアリティ・オリエンテーション(reality orientation)
この問題のポイント
認知症の人に用いられる支援技法を、目的と具体的な働きかけから判別する問題です。
日付、季節、場所、周囲の人など、現在の状況を言葉や視覚的な手がかりで伝え、見当識を補う技法がリアリティ・オリエンテーションです。
解説
リアリティ・オリエンテーションは、時間、場所、人物、季節などの現実に関する情報を、本人が受け取りやすい形で繰り返し示し、見当識を補う方法です。時計、カレンダー、日付を示したホワイトボード、季節の花、天気、行事、本人の予定などを手がかりにします。
事例では、介護福祉職が日付を尋ね、庭に咲いていたあじさいから6月という季節を思い出せるように働きかけています。さらに、ホワイトボードに「6月22日」とあじさいの絵を示し、誕生日までの日数を伝えています。現在の日付と季節を、会話と視覚情報の両方で確認しているため、リアリティ・オリエンテーションに該当します。
ただし、リアリティ・オリエンテーションは、正解を答えさせる試験ではありません。何度も間違いを指摘したり、「さっきも言いました」と責めたりすると、自尊心を傷つけ、不安を強めることがあります。本人の関心や生活に結びつく自然な手がかりを使い、穏やかに情報を補います。
タッチケアは、同意を得たうえで触れることを通して安心感などを支える方法です。アートセラピーは、絵画や造形などの創作活動を用います。ライフレビューは、人生の出来事や意味を振り返る方法です。グリーフケアは、死別などの喪失に伴う悲嘆を支える援助です。
ひっかけポイント
ホワイトボードに絵を描いていても、目的が創作活動ではなく「日付や季節を伝えて見当識を補うこと」であるため、アートセラピーではありません。
介護実践でのポイント
カレンダーや時計は、本人が見やすい位置と大きさにします。日付だけを機械的に伝えるのではなく、「今日は庭のあじさいがきれいですね」「午後はいつもの体操があります」など、本人の生活と結びつけます。混乱や不快感が強まるときは無理に訂正せず、安心を優先します。
選択肢の確認
1.タッチケア(touch care)
適切ではありません。
タッチケアは、本人の同意や反応に配慮しながら手や肩などに触れ、安心感やコミュニケーションを支える方法です。この事例では、触れることを中心とした援助は行われていません。
2.アートセラピー(art therapy)
適切ではありません。
アートセラピーは、絵画や造形などの創作表現を通して感情表現や交流を支える方法です。あじさいの絵は日付と季節を示す手がかりとして描かれており、創作活動を目的としていません。
3.リアリティ・オリエンテーション(reality orientation)
正答。最も適切です。
日付、季節の花、誕生日という情報を、会話とホワイトボードで示し、現在の時間的な見当識を補っているため、リアリティ・オリエンテーションです。
4.ライフレビュー(life review)
適切ではありません。
ライフレビューは、人生の出来事、人間関係、達成したこと、つらかったことなどを振り返り、自分の人生の意味を整理する方法です。この事例は過去の人生全体を振り返る援助ではありません。
5.グリーフケア(grief care)
適切ではありません。
グリーフケアは、死別や大切なものの喪失に伴う悲しみを表現し、適応していく過程を支える援助です。この事例には、喪失や悲嘆への支援は示されていません。
覚えるポイント
リアリティ・オリエンテーションは、時間、場所、人物、季節などの見当識を補う方法です。
時計、カレンダー、掲示、季節の物、本人の予定などを手がかりにします。
絵を使っていても、目的が日付や季節の確認であればアートセラピーではありません。
正解を強要せず、本人の生活に結びつく情報を穏やかに示します。