36Q44第36回 介護福祉士国家試験 過去問

こころとからだのしくみ認知症の理解

Lさん(78歳、女性、要介護1)は、3年前にアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断された。訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用し、夫の介護を受けながら二人で暮らしている。ある日、訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問すると夫から、「用事で外出しようとすると『外で女性に会っている』と言って興奮することが増えて困っている」と相談を受けた。 Lさんの症状に該当するものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

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正解: 3

正答

3.嫉妬妄想

この問題のポイント

認知症に伴ってみられる妄想と、失行・失認・幻視などの認知機能障害を区別する問題です。

根拠がないにもかかわらず、配偶者が自分以外の人と親密な関係にあると確信する状態は、嫉妬妄想に該当します。

解説

Lさんは、夫が用事で外出しようとすると、「外で女性に会っている」と考えて興奮しています。実際の根拠が示されていないのに、配偶者の不貞を確信しているため、嫉妬妄想と考えます。

妄想は、周囲から説明されても訂正しにくい確信です。認知症では、記憶障害によって夫から聞いた外出理由を忘れること、不安や孤独感が強まること、状況を正確に理解しにくくなることなどが重なり、妄想として表れる場合があります。

介護では、事実関係を強く突きつけて論破しようとすると、不安や怒りが強くなることがあります。まず本人の不安や寂しさを受け止め、いつ、どのような場面で起こるか、痛みや体調不良がないか、夫婦双方の安全が保たれているかを確認します。

夫の困りごとも否定せずに聴き、訪問介護員だけで抱え込まず、介護支援専門員、医師、看護職などと情報を共有します。暴力や事故の危険がある場合は、安全確保を優先します。

ひっかけポイント
「見えないものが見える」は幻視、「見えているが何かわからない」は視覚失認、「配偶者が浮気していると根拠なく確信する」は嫉妬妄想です。

介護実践でのポイント
妄想の内容に同意する必要はありませんが、本人が感じている不安は現実のものです。「心配なのですね」と感情を受け止め、安心できる説明や環境調整につなげます。

選択肢の確認

1.誤認
誤り。
誤認は、人や場所、状況などを別のものと取り違える状態です。本事例は、夫の外出を浮気と確信する妄想であり、単なる人物や場所の取り違えではありません。

2.観念失行
誤り。
観念失行は、運動機能が保たれていても、道具を使う一連の動作や複数の手順を正しく行えなくなる状態です。夫の不貞を疑う症状とは異なります。

3.嫉妬妄想
正答。最も適切です。
配偶者がほかの人と関係をもっていると、客観的な根拠なく確信する妄想です。Lさんの「外で女性に会っている」という訴えに一致します。

4.視覚失認
誤り。
視覚失認は、視力そのものに大きな問題がなくても、見た物や人を視覚情報から認識できない状態です。本事例の内容とは異なります。

5.幻視
誤り。
幻視は、実際には存在しない人や物が見える知覚の異常です。Lさんは見えない女性を見たと訴えているのではなく、夫が外で女性に会うと考えています。

覚えるポイント

嫉妬妄想は、配偶者の不貞を根拠なく確信する妄想です。

妄想を正面から否定して争うより、背景にある不安や孤独、体調、環境を確認します。

誤認は取り違え、失行は動作の障害、失認は認識の障害です。

幻視は、実際にはないものが見える症状です。

本人と家族双方の安全と負担を確認し、多職種で支援します。

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