115D044|第115回 歯科医師国家試験 過去問
86 歳の男性。上顎両側側切歯に歯ブラシが引っかかることを主訴として訪問歯 科診療の依頼があった。③② 11②③ブリッジは 4年前に装着されたという。 3か月前に脳出血を起こし右半身が麻痺しており、日常生活は同居の家族が介助して いる。探針での触診で 22歯頸部に約 2mm の段差を認めたが、健全な象 牙質を 触知した。初診時の口腔内写真 (別冊No. 10 )を別に示す。歯周組織検査結果の一部 を表に示す。 3唇 側* 歯 種 口蓋側* 動揺度** 000* :プロービング深さ (mm )** :Miller の判定基準 主訴への対応で適切なのはどれか。 2つ選べ。

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正解: d・e
正答
d、e
この問題のポイント
高齢で片麻痺のある訪問診療患者では、病変の活動性、補綴装置と支台歯の保存可能性、本人・介助者による清掃能力を踏まえ、低侵襲な修復と介助者指導を選びます。
解説
86歳男性は、3か月前の脳出血後に右半身麻痺があり、家族の介助を受けています。主訴は上顎側切歯部で歯ブラシが引っかかることです。探針で約2mmの段差を認めますが、触知される象牙質は健全です。歯周ポケットは主に2〜4mmで、支台歯の動揺度は0です。
口腔内写真では前歯部ブリッジが装着され、辺縁部に段差と清掃しにくい形態がみられます。活動性の軟化象牙質や支台歯の著しい動揺がないため、抜歯やブリッジ全体の再製作より、段差をグラスアイオノマーセメントで修正する低侵襲な対応が適します。
片麻痺によって本人だけの清掃が難しいため、日常的に介助する家族へ、歯ブラシの当て方や補綴装置周囲の清掃方法を具体的に指導します。
画像の確認
実画像では、上顎前歯部ブリッジの辺縁付近に清掃しにくい段差があり、表では各支台歯の動揺度0、ポケットは概ね2〜4 mmと示されている。保存可能な局所段差へのグラスアイオノマーセメント塡塞と、片麻痺患者を支える介助者への清掃指導を選ぶ正答d、eが支持される。
選択肢の確認
a.抜 歯
誤り。
支台歯の動揺はなく、健全象牙質を触知しています。抜歯を必要とする保存不可能な所見は示されていません。
b.ブリッジ再製作
誤り。
再製作は侵襲と通院負担が大きくなります。本症例は局所的な段差への修復で対応でき、ブリッジ全体を直ちに再製作する必要はありません。
c.フッ化ジアンミン銀塗布
誤り。
活動性根面齲蝕の進行抑制などに用いますが、健全象牙質を触知する段差の形態修正には適しません。黒変も生じます。
d.介助者への口腔清掃方法の指導
正しい。
右半身麻痺があり家族が日常生活を介助しているため、ブリッジ周囲を継続的に清掃できるよう介助者へ指導します。
e.グラスアイオノマーセメント塡塞
正しい。
歯頸部の段差を低侵襲に修復して歯ブラシの引っかかりとプラーク停滞を減らせます。歯質への接着とフッ化物徐放も期待できます。
覚えるポイント
- 健全象牙質、動揺度0、軽度の歯周ポケットから保存可能性を判断します。
- 訪問診療では治療侵襲と生活機能を踏まえます。
- 介助者への具体的な清掃指導は治療の一部です。