38Q81|第38回 介護福祉士国家試験 過去問
次の記述のうち、認知症(dementia)のある人にみられる妄想の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 5
正答
5.身体的疾患がないにもかかわらず、自分が病気だと思い込むのは、心気妄想である。
この問題のポイント
妄想の名称は、その人が何を確信しているかという「内容」で区別します。
物を盗まれたと思うのは物盗られ妄想、配偶者が浮気していると思うのは嫉妬妄想、身近な人が偽物に入れ替わったと思うのはカプグラ症候群、自分は重い病気だと確信するのは心気妄想です。
解説
妄想とは、事実とは異なる考えを強く確信し、周囲が説明しても容易には修正できない状態です。認知症のある人では、記憶障害によって出来事の経過が抜け落ちたり、不安や孤立感が強まったりすることが、妄想の背景になる場合があります。
心気妄想は、十分な診察や説明によって身体的な病気が確認されていないにもかかわらず、「自分は重い病気にかかっている」「身体がだめになっている」などと強く思い込む妄想です。したがって、選択肢5の説明が適切です。
一方、しまった場所を思い出せずに「誰かが盗んだ」と考えるのは物盗られ妄想です。配偶者の浮気を確信するのは嫉妬妄想です。家族など身近な人が、外見のよく似た別人に入れ替わったと確信する状態は、妄想性誤認の一つであるカプグラ症候群です。家の中に見知らぬ人が住んでいると訴える状態は、幻の同居人や同居人妄想と呼ばれます。
ひっかけポイント
カプグラ症候群は「身近な人が偽物に入れ替わった」、幻の同居人は「知らない人が家に住んでいる」です。配偶者の浮気を疑う嫉妬妄想とは区別します。
介護実践でのポイント
妄想の内容を正面から否定して言い争うと、不安や不信感が強まることがあります。まず「心配なのですね」などと感情を受け止め、安全を確認します。そのうえで、痛み、発熱、脱水、便秘、薬の影響、視覚・聴覚の変化、せん妄などがないかを観察し、必要に応じて看護職や医師へ報告します。訴えが心気妄想に見えても、実際の身体症状を最初から否定してはいけません。
選択肢の確認
1.自分でしまい忘れた物が見つからず、誰かが盗んだと思い込むのは、嫉妬妄想である。
適切ではありません。
これは物盗られ妄想です。嫉妬妄想は、配偶者やパートナーが浮気をしているなどと確信する妄想です。
2.孫と会って話をしたにもかかわらず、孫にずっと会わせてもらえていないと主張するのは、カプグラ症候群である。
適切ではありません。
カプグラ症候群は、家族など身近な人が、外見のよく似た偽物に入れ替わっていると確信する状態です。この選択肢は、会った出来事を保持できない記憶障害や、会わせてもらえないという被害的な受け止めに関係する可能性がありますが、カプグラ症候群の説明ではありません。
3.介護支援専門員(ケアマネジャー)と妻が話しているのを見て、妻の浮気相手だと思い込むのは、幻の同居人である。
適切ではありません。
配偶者が浮気していると確信するのは嫉妬妄想です。幻の同居人は、自宅などに見知らぬ人が住んでいると確信する妄想性誤認です。
4.家族など身近な人がよく似た偽物と入れ替わっていると主張するのは、被害妄想である。
適切ではありません。
この内容に最も対応する名称はカプグラ症候群です。本人には不安や被害感が生じることがありますが、妄想の内容を正確に分類すると、身近な人が偽物に置き換わったとする妄想性誤認です。
5.身体的疾患がないにもかかわらず、自分が病気だと思い込むのは、心気妄想である。
正答。最も適切です。
身体的な病気が確認されないにもかかわらず、自分は病気であると強く確信するのは心気妄想です。ただし、介護実践では、実際の身体疾患や不調を見落とさないように観察と報告を行います。
覚えるポイント
物が盗まれたと思うのは、物盗られ妄想です。
配偶者が浮気していると思うのは、嫉妬妄想です。
身近な人が偽物に入れ替わったと思うのは、カプグラ症候群です。
自分は病気であると強く思い込むのは、心気妄想です。
妄想への支援では、否定や説得を急がず、感情を受け止め、身体状態と環境要因を確認します。