37Q40|第37回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(84歳、女性、要介護3)は、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)で、介護老人福祉施設に入所している。赤ちゃんの人形を持っていて、「はなちゃん」と呼んで話しかけている。 昼食のため、介護福祉職が居室を訪問すると、Aさんは不安そうな顔で、「はなちゃんがいなくなった。どこへ連れて行ったの?返して」と大声を出した。人形はAさんのロッカーの上に置かれていた。 Aさんに対する介護福祉職の最初の声かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.「心配ですね、一緒に探しませんか」
この問題のポイント
認知症のある人が不安や怒りを示しているとき、最初にどのように声をかけるかを判断する問題です。
最初から事実を訂正したり、忘れたことを指摘したりするのではなく、本人が感じている不安を受け止め、安心できる行動を一緒にとることが重要です。
解説
Aさんにとって「はなちゃん」は、単なる物ではなく、日頃から話しかけて大切にしている存在です。Aさんは、その人形が見つからないと感じ、「連れて行かれた」と強い不安を抱いています。
この場面で最初に必要なのは、ロッカーの上に人形があるという事実を突きつけることではなく、「大切なものが見つからず心配している」というAさんの気持ちを受け止めることです。「心配ですね」と感情に共感し、「一緒に探しませんか」と協力を申し出ることで、Aさんは自分の訴えを理解してもらえたと感じやすくなります。したがって、選択肢3が最も適切です。
共感する対象は、「誰かが連れて行った」という事実ではなく、Aさんの心配や不安です。誰かが盗んだ、連れて行ったと認めて妄想を強めるのではなく、安心できる関わりをしながら一緒に確認します。落ち着いた後に、Aさん自身が人形を見つけられるよう、さりげなくロッカーの方向へ案内することも考えられます。
認知症による記憶障害や見当識の低下があっても、責められたり子ども扱いされたりすれば、悲しさや屈辱、不信感は残ります。「忘れたのですか」「見えないのですか」と能力低下を指摘する言葉は、自尊心を傷つけ、不安や興奮を強める可能性があります。
また、昼食の時間であっても、まず本人の切迫した不安に対応します。食事を優先して捜索を後回しにすると、気持ちを無視されたと感じ、食事への移行も難しくなることがあります。
ひっかけポイント
認知症の人に共感するとは、誤った内容を事実として肯定することではありません。「盗られた」という内容ではなく、「見つからなくて心配」という感情を受け止めます。
介護実践でのポイント
まず落ち着いた声で名前を呼び、目線を合わせ、気持ちを受け止めます。本人と一緒に探し、見つかったときは責めずに安心を共有します。繰り返す場合は、置き場所をわかりやすくするなど、本人の生活習慣に合った環境調整も検討します。
選択肢の確認
1.「私を疑っているんですか」
適切ではありません。
介護福祉職が自分を守るための防御的な言葉であり、Aさんの不安に応えていません。責められたと感じさせ、対立や興奮を強める可能性があります。
2.「置いた場所を忘れたんですか」
適切ではありません。
記憶障害を直接指摘し、本人の失敗として責めるように聞こえます。最初は忘れたことを追及せず、心配な気持ちを受け止めます。
3.「心配ですね、一緒に探しませんか」
正答。最も適切です。
Aさんの不安に共感し、解決のために一緒に行動する声かけです。本人の尊厳を保ち、安心と信頼につながります。
4.「ご飯を食べてから探してはどうですか」
適切ではありません。
Aさんにとっては、大切な人形が見つからないことが現在の最優先の心配です。その不安を後回しにして食事を勧めても、安心して食事へ移れない可能性があります。
5.「ロッカーの上にあるのが見えないんですか」
適切ではありません。
見落としや能力低下を責める表現です。Aさんの自尊心を傷つけ、不安や怒りを強める可能性があります。穏やかに一緒に探し、本人が気づけるように支援します。
覚えるポイント
認知症の人が不安を訴えたときは、最初に感情を受け止めます。
共感するのは、誤った事実ではなく、本人の心配や悲しみです。
記憶障害や見落としを責める声かけは避けます。
本人にとって大切な物の意味を理解し、一緒に行動して安心につなげます。
落ち着いた後は、置き場所の表示や環境調整など、再び困りにくくする支援を考えます。