35Q48|第35回 介護福祉士国家試験 過去問
Mさん(88歳,女性)は,アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)と診断された。夫と二人暮らしで,訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用している。訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問したときに夫から,「最近,日中することがなく寝てしまい,夜眠れていないようだ」と相談を受けた。訪問介護員(ホームヘルパー)は,Mさんが長年していた裁縫を日中にしてみることを勧めた。早速,裁縫をしてみるとMさんは,短時間で雑巾を縫うことができた。Mさんの裁縫についての記憶として,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
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正解: 5
正答
5.手続き記憶
この問題のポイント
長年繰り返して身につけた技能や動作の手順に関する記憶を、手続き記憶といいます。裁縫、自転車の運転、楽器演奏、道具の使用などが代表例です。
この問題では、手続き記憶と、作業記憶・展望的記憶・短期記憶・陳述記憶を区別します。
解説
手続き記憶は、「どのように行うか」という技能や習慣に関する記憶です。一つひとつの手順を言葉で説明しなくても、身体が覚えているように実行できることが特徴です。Mさんは長年裁縫をしており、雑巾を短時間で縫うことができたため、裁縫の技能に関する手続き記憶が保たれていたと考えられます。
アルツハイマー型認知症では、新しく経験した出来事を覚えるエピソード記憶などが早期から障害されやすい一方、長年繰り返して身につけた手続き記憶は比較的長く保たれることがあります。そのため、本人が以前から得意にしていた家事、仕事、趣味などを生活に取り入れることは、残存能力を生かし、役割や楽しみを保つ支援につながります。
ただし、「昔できたから今も必ず安全にできる」と決めつけてはいけません。視力、手指の動き、集中力、疲労、道具の安全性を確認し、本人が望む範囲で必要な支援を行います。本事例では、日中の活動が増えることで生活リズムを整える効果も期待できますが、無理に続けさせず、本人の表情や疲れを観察します。
記憶は一つの種類ではありません。作業記憶は情報を一時的に保持しながら処理する力、展望的記憶は将来する予定を覚えておく力、短期記憶は情報を短時間保持する力、陳述記憶は言葉で説明できる出来事や知識の記憶です。
ひっかけポイント
「作業をしているから作業記憶」ではありません。作業記憶の「作業」は、情報を頭の中に置きながら操作するという意味です。裁縫の技能は手続き記憶です。
介護実践でのポイント
認知症の人の支援では、失われた機能だけでなく、長年の経験、得意なこと、好きなことを確認します。本人の役割や誇りにつながる形で活動を取り入れます。
選択肢の確認
1.作業記憶
適切ではありません。
作業記憶は、情報を短時間保持しながら、計算や会話などの処理を行う機能です。長年身につけた裁縫の技能そのものを表す記憶ではありません。
2.展望的記憶
適切ではありません。
展望的記憶は、「明日の受診を覚えておく」「時間になったら薬を飲む」など、将来行う予定を覚えておく記憶です。
3.短期記憶
適切ではありません。
短期記憶は、聞いた電話番号などの情報を短い時間保つ記憶です。裁縫の動作手順を長年保持していることとは異なります。
4.陳述記憶
適切ではありません。
陳述記憶は、出来事や知識など、意識して思い出し言葉で説明できる記憶です。裁縫を身体で実行する技能は、非陳述的な手続き記憶に分類されます。
5.手続き記憶
正答。最も適切です。
長年の反復で身につけた裁縫の方法や道具の使い方など、「どのように行うか」に関する技能の記憶です。
覚えるポイント
手続き記憶は、長年身につけた技能や習慣の記憶です。
裁縫、調理、楽器演奏、自転車の運転などが代表例です。
認知症では、新しい出来事の記憶よりも手続き記憶が比較的保たれることがあります。
本人の得意な活動を、安全と意思に配慮しながら生活に生かします。