35Q41|第35回 介護福祉士国家試験 過去問
アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)の,もの盗られ妄想に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
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正解: 2
正答
2.本人の不安から生じることが多い。
この問題のポイント
もの盗られ妄想は、認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つです。単なる「うそ」や「性格の問題」ではなく、記憶障害によるしまい忘れと、本人が感じている不安や混乱が重なって生じることがあります。
この問題では、もの盗られ妄想の背景と、妄想・幻視・薬物療法の違いを見分けます。
解説
アルツハイマー型認知症では、新しい出来事を記憶することが難しくなります。本人が大切な物を安全な場所にしまっても、しまった行為そのものを思い出せず、「ここにあるはずなのに見つからない」という状況が起こります。
本人にとっては、物がなくなったという体験は現実です。そこで、記憶の空白を埋めるように「誰かが盗った」と解釈し、もの盗られ妄想につながることがあります。背景には、物をなくしたことへの不安、生活を自分で管理できなくなる不安、周囲への不信感、孤独感などが関係します。
妄想は、本人が強く確信している考えです。正論で訂正したり、「そんなことはありません」と繰り返し否定したりしても、誤りに気づくとは限りません。むしろ、否定されたと感じて不安や怒りが強まることがあります。まず「見つからなくて心配なのですね」と気持ちを受け止め、本人と一緒に探します。大切な物の置き場所をわかりやすく決めるなど、環境を整えることも有効です。
症状が急に出現した場合や強くなった場合は、痛み、便秘、脱水、感染症、睡眠不足、薬の影響、生活環境の変化なども確認し、医療職へ報告します。抗精神病薬は、もの盗られ妄想をあらかじめ防ぐために一律に用いる薬ではありません。本人や周囲の安全に重大な影響があり、環境調整などで改善しない場合に、医師が必要性と副作用を慎重に判断します。
ひっかけポイント
もの盗られ妄想は、見えないものが見える「幻視」とは異なります。記憶障害と不安を背景に、実際にいる家族や介護者が「盗った人」とされることもあります。
介護実践でのポイント
本人の訴えを頭から否定せず、不安を受け止めます。本人の前で勝手に持ち物を移動せず、置き場所を一緒に決め、見つけやすい環境をつくります。
選択肢の確認
1.説明をすれば自身の考えの誤りに気づくことが多い。
適切ではありません。
妄想は、本人が事実だと強く確信している考えです。説明や説得だけで訂正できることは多くなく、強く否定すると不安や不信感を高めることがあります。
2.本人の不安から生じることが多い。
正答。最も適切です。
しまい忘れを思い出せないことへの混乱や、大切な物を失った不安などが背景となり、「誰かに盗られた」という解釈につながることがあります。
3.現実に存在しない人が犯人とされる。
適切ではありません。
犯人とされるのは、同居家族や身近な介護者など、現実に存在して本人の生活に関わっている人であることも少なくありません。存在しない人物に限られるものではありません。
4.主に幻視が原因である。
適切ではありません。
もの盗られ妄想は、主として記憶障害や不安などを背景に生じます。幻視は、実際には存在しないものが見える症状であり、もの盗られ妄想とは区別します。
5.症状の予防には抗精神病薬が有効である。
適切ではありません。
抗精神病薬を予防目的で一律に使用するものではありません。まず身体状態、環境、本人の不安などを評価し、非薬物的な対応を行います。薬物療法は医師が必要性と副作用を慎重に判断します。
覚えるポイント
もの盗られ妄想は、認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つです。
背景には、しまい忘れを伴う記憶障害、不安、孤独感、環境の変化などがあります。
正論で言い負かすのではなく、本人の不安を受け止め、一緒に探し、環境を整えます。
症状が急に現れたときは、身体不調や薬の影響も確認し、医療職と連携します。