119D088|第119回 歯科医師国家試験 過去問
48 歳の男性。下顎左側第一大臼歯の歯肉の腫脹を主訴として来院した。6 年前 に治療を受けたが、1 か月前から歯肉が腫れてきたという。自発痛はないが咬合痛 がある。プロービング深さは全周3 mm 以内であった。初診時の口腔内写真(別冊 No. 31A)、ガッタパーチャポイント挿入時の口腔内写真(別冊No. 31B)及びエッ クス線画像(別冊No. 31C)を別に示す。 診断名はどれか。1 つ選べ。

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正解: h
正答
h
この問題のポイント
根尖部病変から瘻孔が形成され、ガッタパーチャポイントで原因歯へ交通を追跡できる無痛性の経過は、慢性化膿性根尖性歯周炎に一致します。
解説
症例では6年前に治療を受けた歯に、1か月前から歯肉腫脹があり、自発痛はなく咬合痛があります。プロービング深さが全周3 mm以内であるため、深い孤立性歯周ポケットを伴う垂直性歯根破折より、根尖性病変からの瘻孔が考えやすい所見です。
ガッタパーチャポイントを瘻孔へ挿入してエックス線撮影すると、排膿路の起始部を追跡できます。慢性化膿性根尖性歯周炎では、歯髄壊死・感染根管を原因として根尖部に慢性炎症が続き、瘻孔から排膿するため強い自発痛を欠くことがあります。
治療の基本は感染根管治療による感染源除去です。保存困難な場合や通常の根管治療で治癒しない場合は外科的歯内療法などを検討します。
画像の確認
実画像Aでは下顎左側第一大臼歯頰側歯肉に瘻孔があり、Bで挿入したガッタパーチャポイントがCの根尖部透過像へ到達している。根管内感染が瘻孔を介して排膿する慢性化膿性根尖性歯周炎の像である。
選択肢の確認
a.急性単純性歯髄炎
本症例の診断とは一致しません。
急性単純性歯髄炎では歯髄は生活し、冷刺激などによる誘発痛が中心です。瘻孔を伴う根尖病変とは一致しません。
b.急性化膿性歯髄炎
本症例の診断とは一致しません。
急性化膿性歯髄炎では強い自発痛・拍動痛がみられ、慢性経過の瘻孔形成とは異なります。
c.慢性潰瘍性歯髄炎
本症例の診断とは一致しません。
慢性潰瘍性歯髄炎は露髄面に潰瘍を形成する生活歯髄の病態で、根尖部瘻孔を説明しません。
d.歯髄壊死
本症例の診断とは一致しません。
歯髄壊死は根尖性歯周炎の原因になりますが、歯肉瘻孔と排膿を含む現在の根尖周囲病変の診断名としては不十分です。
e.急性単純性根尖性歯周炎
本症例の診断とは一致しません。
急性単純性根尖性歯周炎では打診痛が中心で、化膿・瘻孔形成はみられません。
f.急性化膿性根尖性歯周炎
本症例の診断とは一致しません。
急性化膿性根尖性歯周炎では強い咬合痛、腫脹、膿瘍形成など急性炎症が主体で、長く排膿する瘻孔を伴う慢性経過とは異なります。
g.慢性単純性根尖性歯周炎
本症例の診断とは一致しません。
慢性単純性根尖性歯周炎は根尖部に慢性炎症性病変を形成しますが、排膿を伴う瘻孔形成がない病態として区別します。
h.慢性化膿性根尖性歯周炎
正答。診断は慢性化膿性根尖性歯周炎です。
感染根管を原因とする根尖部化膿性炎症が慢性化し、瘻孔から排膿する病態であり、本症例に一致します。
覚えるポイント
- 瘻孔へガッタパーチャポイントを挿入して原因部位を追跡します。
- 慢性化膿性根尖性歯周炎は排膿により強い自発痛を欠くことがあります。
- 治療の基本は感染根管内の感染源除去です。