38Q51第38回 介護福祉士国家試験 過去問

介護生活支援技術

Aさん(85歳、男性、要介護3)は、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断され、認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)で生活をしている。入所時、Aさんは、尿意や便意はあり、自分でトイレに行って排泄{はいせつ}できていた。最近、認知機能の低下によって、トイレ以外の場所で排泄{はいせつ}するようになった。 次の記述のうち、Aさんの状態に合わせた介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

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正解: 5

正答

5.トイレの出入口に「トイレ」と書いた紙を貼る。

この問題のポイント

Aさんには尿意や便意があり、入所時には自分でトイレへ行って排泄できていました。したがって、排泄する身体機能そのものよりも、認知機能の低下によって「トイレの場所や出入口がわかりにくくなった」可能性に着目する問題です。

本人が今ももっている排泄能力を活かすには、すぐに紙おむつへ切り替えるのではなく、トイレを見つけやすくする環境調整を行います。

解説

アルツハイマー型認知症では、記憶や見当識、場所を認識する力などが低下し、以前はわかっていたトイレの位置がわからなくなることがあります。尿意や便意が保たれていても、トイレまでの道順や出入口を判断できなければ、別の場所で排泄してしまうことがあります。

トイレの出入口に「トイレ」と明確に表示することは、本人が場所を見つけるための手がかりになります。文字だけでわかりにくい場合は、本人になじみのある表示、絵やピクトグラム、目立つ色の組合せを用いるなど、Aさんの認識しやすさに合わせて工夫します。廊下の照明を整え、トイレまでの動線上の障害物をなくし、出入口を見つけやすくすることも大切です。

また、排泄の時刻、トイレを探している様子、衣服の着脱、歩行状態などを観察し、必要な部分だけを支援します。急に排泄状態が変わった場合は、認知症の進行だけと決めつけず、尿路感染症、便秘、下痢、痛み、薬の影響なども考え、看護職などへ報告します。

介護実践でのポイント
失敗を叱ったり、人前で注意したりせず、落ち着いて清潔を保ちます。本人の尊厳に配慮しながら、「トイレはこちらです」と自然に案内し、自分でできる部分は見守ります。

選択肢の確認

1.骨盤底筋訓練を行う。
適切ではありません。
骨盤底筋訓練は、腹圧性尿失禁などで骨盤底筋の働きを高めるために行われます。Aさんは尿意や便意があり、認知機能の低下後にトイレ以外で排泄するようになっているため、まずはトイレの認識や動線を整えることが必要です。

2.紙おむつを使用する。
適切ではありません。
紙おむつは必要な場面で用いることがありますが、Aさんには排泄の感覚と自力でトイレへ行けていた能力があります。環境調整や個別の誘導を検討せずに紙おむつへ切り替えると、残存機能や自立、尊厳を損なうおそれがあります。

3.一日の水分摂取量を減らす。
適切ではありません。
水分を減らしても、トイレの場所がわからないという原因は解決しません。脱水、便秘、尿路感染症などの危険を高めるため、医療上の指示がない限り、排泄の失敗を防ぐ目的で一律に水分を制限してはいけません。

4.ほかの利用者と同じ時間にトイレへ誘導する。
適切ではありません。
排泄のリズムは一人ひとり異なります。誘導を行う場合は、Aさんの普段の排泄時刻やサインを記録し、本人のタイミングに合わせます。ほかの利用者と同じ時間に一律に誘導することは、個別性を欠きます。

5.トイレの出入口に「トイレ」と書いた紙を貼る。
正答。最も適切です。
トイレの場所を認識するための視覚的な手がかりとなり、Aさんがもっている尿意・便意と排泄動作を活かしながら、自分でトイレを利用できるようにする環境調整です。

覚えるポイント

認知症の人の排泄では、「排泄機能が失われた」とすぐに判断せず、トイレの場所、動線、表示、照明、衣服、排泄リズムを確認します。

支援の基本は、本人の残存機能を活かし、できない部分だけを補うことです。

排泄状態が急に変化したときは、感染症、便秘、下痢、痛み、薬の影響なども確認し、多職種へ報告します。

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