37Q63|第37回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(80歳、女性)は、脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症で左片麻痺{ひだりかたまひ}があり、介護老人保健施設に入所して在宅復帰に向けた訓練をしている。嚥下障害{えんげしょうがい}もあるため、経鼻経管栄養による栄養摂取をしているが、経口摂取できないことでイライラしてチューブを抜去したことがある。医師からは一時的な治療であると説明を受けて同意していた。 経管栄養中に介護福祉士が訪室すると、チューブを触りながら、「自分の口から食べたいから、このチューブを抜いてほしい。見た目も良くない」と訴えがあった。看護師に連絡し、チューブが抜けていないことを確認してもらった。 このときのAさんへの介護福祉士の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.医師や看護師にAさんの思いを伝える。
この問題のポイント
経管栄養を受ける利用者の意思を尊重しながら、介護福祉士の業務範囲と多職種連携を踏まえて対応できるかを問う問題です。
Aさんは、「口から食べたい」「チューブを抜いてほしい」「見た目も気になる」と、自分の希望や苦痛を具体的に表明しています。まず、その思いを受け止め、治療や栄養方法を検討する医師・看護師などのチームへ正確に伝えることが必要です。
解説
Aさんは一度、経鼻経管栄養について説明を受けて同意しています。しかし、同意した後であっても、本人の気持ちや希望が変わることがあります。意思決定支援では、現在の本人の思いを丁寧に確認し、継続して意思が反映されるように支援します。
介護福祉士は、Aさんの訴えを否定せず、「口から食べたいのですね」「見た目も気になっているのですね」などと受け止めます。そのうえで、発言内容、表情、チューブに触れていた状況などを医師や看護師へ報告し、経口摂取の可能性、嚥下機能、治療の見通し、代替方法などを多職種で再検討できるようにします。
経管栄養の滴下速度は、医師の指示や個別の計画に基づいて管理されます。早く終わらせるために介護福祉士が独断で速度を変えると、腹部膨満、嘔気、嘔吐、下痢、逆流や誤嚥などにつながるおそれがあります。
また、胃ろう造設や経口摂取の再開は、医学的評価を伴う判断です。介護福祉士が単独で治療法を提案したり、すぐに実施を勧めたりするのではなく、本人の希望をチームにつなぐことが役割です。
介護実践でのポイント
チューブを触っている行動だけを止めようとせず、その背景にある苦痛、不快感、外見への思い、食べる楽しみ、治療への理解を確認します。本人の言葉をそのまま記録し、多職種へ共有します。
ひっかけポイント
「本人の希望を尊重すること」と「介護福祉士が医療上の判断を独断で行うこと」は別です。希望は受け止め、医学的判断が必要な内容は医師・看護師等へつなぎます。
選択肢の確認
1.チューブを抜かないようにAさんの右手を固定する。
適切ではありません。
右手を固定することは身体拘束に当たり得ます。切迫した危険への緊急対応を除き、本人の訴えの背景を確認せずに行動を制限することは、尊厳や意思を損ないます。
2.経管栄養が早く終わるように滴下速度を調節する。
適切ではありません。
滴下速度は個別の指示に従います。介護福祉士が独断で速くすると、消化器症状や逆流、誤嚥などを起こす危険があります。
3.医師や看護師にAさんの思いを伝える。
正答。最も適切です。
本人の現在の希望を受け止め、治療や栄養方法を再検討できる医師・看護師などへ正確に伝えることは、意思決定支援と多職種連携に沿った対応です。
4.Aさんに胃ろうの造設を提案する。
適切ではありません。
胃ろう造設は医学的な適応、本人への説明と同意、今後の生活への影響を含めて検討する医療上の選択です。介護福祉士が単独で提案するのではなく、まず本人の思いをチームへ伝えます。
5.Aさんに経口摂取を提案する。
適切ではありません。
口から食べたいという希望は重要ですが、嚥下障害があるため、安全に経口摂取できるかを医師、看護師、言語聴覚士などが評価する必要があります。介護福祉士が独断で再開を勧めることはできません。
覚えるポイント
一度同意した後でも、本人の意思や希望は変わることがあります。
訴えを否定せず、本人の言葉と気持ちを丁寧に受け止めます。
医療上の判断が必要な希望は、医師・看護師等へ正確に伝えます。
滴下速度の変更、胃ろう造設、経口摂取の再開を介護福祉士が独断で決めてはいけません。
行動を制限する前に、行動の背景にある不快感や願いを確認します。