37Q4|第37回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(80歳、男性)は、有料老人ホームに入所することになった。一人暮らしが長かったAさんは、入所当日、担当の介護福祉職と話すことに戸惑っている様子で、なかなか自分のことを話そうとはしなかった。介護福祉職は、一方的な働きかけにならないように、Aさんとコミュニケーションをとるとき、あいづちを打ちながらAさんの発話を引き出すように心がけた。 このときの、介護福祉職の対応の意図に当てはまるものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 5
正答
5.双方向のやり取り
この問題のポイント
コミュニケーションは、介護福祉職から利用者へ一方的に話しかけることではなく、互いに送り手と受け手を交代しながら意味を共有する双方向の過程です。
あいづちを打ち、Aさんの発話を引き出した意図が何であるかを考えます。
解説
Aさんは、有料老人ホームへ入所した当日であり、新しい環境と初対面の介護福祉職に戸惑っています。なかなか自分のことを話さないからといって、介護福祉職が質問を続けたり、一方的に説明したりすると、Aさんの緊張を強める可能性があります。
介護福祉職は、あいづちを打ちながらAさんの発話を引き出しています。あいづちは、「聞いています」「話を続けてよいですよ」という非言語的・言語的なメッセージです。Aさんが自分のペースで話し、介護福祉職がその内容を受け止めて応答することで、相互に情報や気持ちをやり取りできます。これは双方向のコミュニケーションです。
双方向のやり取りでは、話すことだけでなく、相手の言葉を待つこと、沈黙を急いで埋めないこと、表情や姿勢を観察すること、相手の言葉を繰り返したり要約したりして理解を確かめることも大切です。介護福祉職の都合で会話を進めず、Aさんが伝えたい内容を中心にします。
互いの自己開示は、双方が自分の経験や考えなどを相手に伝えることです。信頼関係の形成に役立つ場合はありますが、この場面では介護福祉職自身が自分について話しているわけではありません。また、コミュニケーション能力の評価、感覚機能への配慮、認知機能の改善を目的とした場面とも読み取れません。
ひっかけポイント
あいづちは、単なる礼儀ではありません。相手の話を受け止め、発話を促し、会話を一方通行にしないための重要な働きがあります。
介護実践でのポイント
入所直後は、利用者が不安や喪失感を抱えていることがあります。無理に聞き出すのではなく、名乗る、目的を伝える、答えを急がせない、話したくない意思も尊重するなど、安心して話せる関係をつくります。
選択肢の確認
1.互いの自己開示
適切ではありません。
自己開示とは、自分の経験、感情、考えなどを相手に伝えることです。この場面では、介護福祉職が自分について話すことではなく、あいづちによってAさんの発話を促しています。
2.コミュニケーション能力の評価
適切ではありません。
Aさんがどの程度話せるかを評価することが主な意図ではありません。評価されていると感じさせる対応は、入所直後の緊張を強める可能性があります。
3.感覚機能の低下への配慮
適切ではありません。
事例には、視覚や聴覚などの感覚機能が低下しているという情報はありません。あいづちは、感覚機能への補償よりも、相手の発話を受け止めて会話を続ける働きです。
4.認知機能の改善
適切ではありません。
あいづちを打って話を引き出すことは、認知機能を改善する訓練ではありません。Aさんの気持ちや考えを尊重し、やり取りを成立させるための対応です。
5.双方向のやり取り
正答。最も適切です。
Aさんが話し、介護福祉職があいづちや応答を返し、さらにAさんの発話が続くという相互のやり取りをつくっています。一方的な働きかけを避けるという事例の記述にも一致します。
覚えるポイント
コミュニケーションは、送り手と受け手が交代する双方向の過程です。
あいづちは、傾聴していることを伝え、相手の発話を促します。
自己開示は自分について相手に伝えることであり、双方向性そのものとは異なります。
入所直後など緊張が強い場面では、質問を急がず、沈黙や相手のペースを尊重します。
介護福祉職の都合よりも、利用者が安心して伝えられる関係づくりを優先します。