34Q3|第34回 介護福祉士国家試験 過去問
介護福祉職はBさんから、「認知症(dementia)の母の介護がなぜかうまくいかない。深夜に徘徊{はいかい}するので、心身共に疲れてきた」と相談された。介護福祉職は、「落ち込んでいてはダメですよ。元気を出して頑張ってください」とBさんに言った。後日、介護福祉職はBさんに対する自身の発言を振り返り、不適切だったと反省した。 介護福祉職はBさんに対してどのような返答をすればよかったのか、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 5
正答
5.「お母さんのために頑張ってきたんですね」
この問題のポイント
相談を受けた最初の段階では、解決策を急いで提示するよりも、相手がこれまで続けてきた介護と現在のつらさを受容的・共感的に聴くことが大切です。
正答は、Bさんの努力を認め、感情を表出しやすくする応答です。励まし、一般化、支援者自身の体験へのすり替えとの違いを見分けます。
解説
Bさんは、母親の介護がうまくいかないという自責感と、深夜の対応による心身の疲労を訴えています。この段階で必要なのは、「もっと頑張るべきだ」と励ますことではなく、これまで介護を続けてきた努力と負担を認め、安心して気持ちを話せるようにすることです。
「お母さんのために頑張ってきたんですね」という応答は、Bさんの経験を評価せずに受け止める受容と、気持ちに寄り添う共感を示しています。Bさんが「つらかった」「眠れない」「自分を責めている」など、さらに具体的な思いを語るきっかけになります。
共感とは、支援者が相手と全く同じ経験をしたと主張することではありません。相手の立場から、その人がどのように感じているかを理解しようとし、その理解を言葉や態度で返すことです。支援者自身の話を中心にすると、相談者の気持ちを十分に聴けなくなることがあります。
気持ちを聴いた後は、母親が深夜に歩き回る背景、生活リズム、痛みや不安、環境、Bさんの睡眠と健康、利用中のサービスなどを確認します。必要に応じて、介護支援専門員や医療職と連携し、短期入所、通所サービス、見守り方法、認知症の症状への支援などを検討します。
家族介護者への支援では、介護を続けることだけを当然とせず、休息を確保し、負担を分かち合うことが重要です。介護者の疲労が強い場合は、本人と家族双方の安全のため、早めに支援体制を調整します。
ひっかけポイント
「元気を出して」「みんな同じです」といった言葉は、励ます意図があっても、相談者の苦しさを否定したり小さく扱ったりすることがあります。まずは相手の努力と感情を言葉にして返します。
介護実践でのポイント
家族の疲労を聴いた後は、睡眠不足、体調、介護を代われる人、緊急時の連絡先、サービス利用状況を確認します。家族だけに抱え込ませず、多職種で支援します。
選択肢の確認
1.「お母さんに施設へ入所してもらうことを検討してはどうですか」
適切ではありません。
施設入所が必要かどうかを検討することはあり得ますが、Bさんの気持ちや母親の状態を十分に聴く前に結論を示しています。まずはBさんの努力と疲労を受け止め、希望や状況を確認します。
2.「私も疲れているので、よくわかります」
適切ではありません。
支援者自身の疲労を持ち出すと、話の中心がBさんから介護福祉職へ移ります。また、経験が異なるのに「よくわかる」と断定すると、Bさんが理解されていないと感じることがあります。
3.「認知症(dementia)の方を介護しているご家族は、皆さん疲れていますよ」
適切ではありません。
家族介護者に疲労がみられることは珍しくありませんが、「皆さん疲れている」と一般化すると、Bさん固有のつらさが軽く扱われたように感じられます。Bさん本人の経験を具体的に聴きます。
4.「近所の人に助けてもらえるように、私から言っておきます」
適切ではありません。
地域の協力が役立つ場合はありますが、Bさんや母親の同意を確認せず、介護福祉職が近所の人へ一方的に依頼することは適切ではありません。プライバシーにも配慮が必要です。
5.「お母さんのために頑張ってきたんですね」
正答。最も適切です。
Bさんが母親のために介護を続けてきた努力を認める言葉です。評価や指示をせずに受容と共感を示し、Bさんが疲労や不安をさらに話しやすくします。
覚えるポイント
相談の初期は、助言より先に受容・共感・傾聴を行います。
共感は、相手の立場から気持ちを理解しようとすることであり、支援者自身の体験を語ることではありません。
励ましや一般化が、相手の苦しさを否定するメッセージになることがあります。
家族介護者の疲労には、休息の確保、サービス調整、多職種連携を組み合わせて対応します。