36Q68|第36回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(48歳、女性、要介護1)は、若年性認知症(dementia with early onset)で、夫、長女(高校1年生)と同居している。Aさんは家族と過ごすことを希望し、小規模多機能型居宅介護で通いを中心に利用を始めた。Aさんのことが心配な長女は、部活動を諦めて学校が終わるとすぐに帰宅していた。 ある日、夫が、「長女が、学校の先生たちにも相談しているが、今の状況をわかってくれる人がいないと涙を流すことがある」と介護福祉職に相談をした。 夫の話を聞いた介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.同じような体験をしている人と交流できる場について情報を提供する。
この問題のポイント
若年性認知症のある本人だけでなく、家族、特に高校生の長女が抱えている孤立感や生活への影響にも目を向ける問題です。
長女は、母親を心配して部活動を諦め、学校の先生に相談しても理解されないと感じ、涙を流しています。家族のケアを過度に担うヤングケアラーの状態にある可能性を考え、本人の気持ちを聴き、同じ立場の人とつながれる情報を提供することが大切です。
解説
若年性認知症は、働き盛りや子育て期に発症することがあり、本人の就労、家計、夫婦関係、子どもの学校生活など、家族全体に影響を及ぼすことがあります。本事例では、Aさんが家族と暮らし続けたいという希望をもち、サービスを利用しています。一方で、長女は自分の活動を諦め、孤独やつらさを抱えています。
長女のように、本来は大人が担うと考えられる家事や家族の世話、見守り、感情面の支えなどを日常的に行い、学校生活や友人関係に影響が出ている子どもは、ヤングケアラーとして支援が必要な場合があります。ただし、介護福祉職が一方的に呼び名を当てはめるのではなく、本人が何をしているのか、どのように感じているのか、何を望んでいるのかを丁寧に確認します。
同じ経験をもつ人との交流には、「自分だけではない」と感じられること、気持ちを言葉にできること、生活上の工夫や支援制度の情報を得られることなどの利点があります。若年性認知症の本人・家族の交流会、家族会、認知症カフェ、ヤングケアラーの相談窓口や当事者交流など、年齢や希望に合う場を紹介します。
情報を提供するだけで終わらず、長女本人が参加を希望するか、参加方法や個人情報への不安がないかを確認します。必要に応じて、家族の同意と長女の意思を尊重しながら、学校、介護支援専門員、若年性認知症支援コーディネーター、自治体の子ども・家庭支援部門などと連携します。
掃除や洗濯を教えることは、長女の負担をさらに固定する可能性があります。「家族でもっと頑張る」と励ますことも、すでに苦しんでいる家族へ責任を押しつける対応になります。
ひっかけポイント
家族支援では、介護技術を教えることが常に最優先とは限りません。孤立、学校生活への影響、休息、本人の思いを確認し、負担を減らす支援を考えます。
介護実践でのポイント
夫からの情報だけで長女の希望を決めず、長女が安心して話せる機会をつくります。Aさんの希望と長女の生活の双方を大切にし、家族全員が無理なく暮らせる支援体制をチームで検討します。
選択肢の確認
1.長女に、掃除や洗濯の方法を教える。
適切ではありません。
長女はすでに母親を心配して部活動を諦めています。家事の技術を教えることは、長女の介護負担をさらに増やす可能性があります。
2.家族でもっと頑張るように、夫を励ます。
適切ではありません。
家族はすでに負担と不安を抱えています。努力不足と受け取られかねない励ましではなく、負担を具体的に把握し、社会資源につなげる必要があります。
3.同じような体験をしている人と交流できる場について情報を提供する。
正答。最も適切です。
同じ立場の人との交流は、孤立感を和らげ、気持ちや経験を共有し、支援制度や生活上の工夫を知る機会になります。
4.介護老人福祉施設への入所の申込みを勧める。
適切ではありません。
Aさんは家族と過ごすことを希望しています。長女のつらさだけを理由に、本人と家族の意思を確認せず入所を勧めるのは適切ではありません。
5.介護支援専門員(ケアマネジャー)に介護サービスの変更を提案する。
適切ではありません。
サービスの見直しが必要になることはありますが、この場面で明確になっている長女の孤立感に対する最初の支援としては、同じ体験をもつ人と交流できる場の情報提供がより直接的です。見直しは本人・家族の希望を確認してチームで行います。
覚えるポイント
若年性認知症では、本人だけでなく、配偶者や子どもの生活にも影響が生じます。
高校生が家族のケアを担い、学校生活や部活動を諦めている場合は、ヤングケアラー支援の視点が必要です。
同じ立場の人との交流は、孤立の軽減、情報交換、仲間づくりにつながります。
家族へ「もっと頑張る」ことを求めず、負担を減らす社会資源を検討します。
本人の意思と家族それぞれの意思を確認し、多機関で連携します。