36Q119|第36回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題117から問題119までについて答えなさい。 〔事 例〕 Dさん(70歳、男性)は、自宅で妻と二人暮らしで、年金収入で生活している。ある日、車を運転中に事故に遭い救急搬送された。医師からは、第4胸髄節まで機能が残存している脊髄損傷(spinal cord injury)と説明を受けた。Dさんは、入院中に要介護3の認定を受けた。 Dさんは、退院後は自宅で生活することを望んでいた。妻は一緒に暮らしたいと思うが、Dさんの身体状況を考えると不安を感じていた。介護支援専門員(ケアマネジャー)は、「退院後は、在宅復帰を目的に、一定の期間、リハビリテーション専門職がいる施設で生活してはどうか」とDさんに提案した。Dさんは妻と退院後の生活について話し合った結果、一定期間施設に入所して、その間に、自宅の住宅改修を行うことにして、介護支援専門員(ケアマネジャー)に居宅介護住宅改修費について相談した。 Dさんが施設入所してから3か月後、住宅改修を終えた自宅に戻ることになった。Dさんは自宅での生活を楽しみにしている。その一方で、不安も抱えていたため、担当の介護福祉士は、理学療法士と作業療法士に相談して、生活上の留意点を記載した冊子を作成して、Dさんに手渡した。 次の記述のうち、冊子の内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 5
正答
5.外出するときには、事前に多機能トイレの場所を確認する。
この問題のポイント
第4胸髄節まで機能が残存しているDさんでは、上肢機能は保たれる一方、両下肢の麻痺や膀胱直腸障害が生じる可能性があります。残存機能を生かしながら、車いすでの外出と排泄管理を具体的に支える内容を選びます。
解説
胸髄損傷では、一般に上肢機能は保たれ、損傷部位より下の体幹や両下肢に麻痺が生じます。Dさんは第4胸髄節まで機能が残存しているため、手や腕を使用する食事や更衣は行える可能性が高い一方、移動には車いすが必要となり、排尿・排便を調整する機能にも障害が生じることが考えられます。
外出先で安心して排泄するためには、車いすで入れる広さ、手すり、便器への移乗スペースなどがある多機能トイレの場所を、事前に確認することが重要です。経路の途中や目的地のトイレ環境を把握することは、失敗への不安を減らし、Dさんの外出と社会参加を支えます。
ただし、同じ損傷高位でも、完全損傷か不完全損傷か、体幹機能、感覚、合併症などによって必要な支援は異なります。車いすや寝具、自助具は損傷高位だけで一律に決めず、本人の実際の動作と希望を評価して選びます。
ひっかけポイント
胸髄損傷を「脊髄損傷だから手も使えない」と捉えないことが重要です。手指機能の低下に用いる食事・更衣の自助具は、主に頚髄損傷などで検討されます。また、褥瘡予防は重要ですが、全員にエアーマットを指定すればよいわけではありません。
介護実践でのポイント
外出支援では、多機能トイレの有無だけでなく、車いすで通れる経路、入口幅、移乗方向、手すり、排泄用品を処理できる設備、利用可能時間を本人と確認します。排泄方法、皮膚の観察、除圧、必要な用品、緊急時の連絡方法も共有します。第4胸髄レベルの損傷では自律神経過反射の危険もあるため、急な激しい頭痛、発汗、顔面の紅潮などがあれば、排尿・排便の問題なども疑い、速やかに医療職へ連絡します。
選択肢の確認
1.食事では、スプーンを自助具で手に固定する。
誤りです。
スプーンを手に固定する自助具は、握力や手指機能が低下している人に用います。胸髄損傷では上肢機能は通常保たれるため、Dさんに必要であるという根拠はありません。
2.移動には、リクライニング式車いすを使用する。
誤りです。
リクライニング式車いすは、座位保持が難しい場合や体幹・頭部の支持が必要な場合などに検討します。第4胸髄節まで機能が残存しているという情報だけでリクライニング式を指定するのは適切ではなく、上肢機能を生かして自走できる車いすなどを個別に検討します。
3.寝具は、エアーマットを使用する。
誤りです。
脊髄損傷では感覚障害や活動性低下による褥瘡の予防が重要ですが、エアーマットの必要性は、寝返り能力、皮膚状態、除圧能力、移乗方法などを評価して決めます。全員に一律に使用するものではなく、使用しても体位変換や皮膚観察が不要になるわけではありません。
4.更衣は、ボタンエイドを使用する。
誤りです。
ボタンエイドは、手指の巧緻動作や把持が難しい人のボタン操作を補う自助具です。胸髄損傷では手指機能は通常保たれるため、Dさんに必要であるという情報はありません。
5.外出するときには、事前に多機能トイレの場所を確認する。
正しいです。
胸髄損傷では車いす移動と膀胱直腸障害が生じる可能性があります。利用可能な多機能トイレを事前に確認することは、排泄への不安を減らし、安全な外出と社会参加を支えます。
覚えるポイント
- 胸髄損傷では、一般に上肢機能が保たれ、両下肢に対麻痺が生じる。
- 脊髄損傷では、膀胱直腸障害を伴うことがある。
- 外出前に、車いすで利用できるトイレと移動経路を確認する。
- 自助具、車いす、寝具は、損傷高位だけでなく実際の機能を評価して選ぶ。
- 褥瘡予防では、除圧、体位変換、皮膚観察を組み合わせる。
- 本人の希望を尊重し、環境を整えて外出と社会参加を支える。