34Q115|第34回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題114から問題116までについて答えなさい。 〔事 例〕 Cさん(83歳、女性)は、一人暮らしで、近所に買い物に行く以外はテレビを見て過ごしている。近県に息子がいるが、仕事が忙しく、会いに来ることはあまりなかった。 ある日、息子が久しぶりに訪問すると、部屋の中がごみや衣類などで散らかっていた。病院を受診するとCさんはアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断され、要介護1と認定された。 Cさんは、時々、電気湯沸しポットの使い方がわからなくなって湯が出せなかったり、お茶を入れる順番がわからずに混乱する様子が見られた。 心配した息子は、介護保険サービスを利用することにした。後日、介護支援専門員(ケアマネジャー)が訪問し、介護保険サービスの利用についてCさんや息子と話し合った。週2回、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することになり、介護支援専門員(ケアマネジャー)は、「自宅で、衛生的な生活ができる」をケアプランの長期目標とした。 Cさんは、たびたび息子に電気湯沸しポットが壊れていると訴えるようになった。 Cさんのこのような状態に該当するものとして、適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.遂行機能障害
この問題のポイント
遂行機能とは、目的を達成するために行動を計画し、手順を組み立て、順番に実行し、結果を確認する機能です。ポットの使い方やお茶を入れる順番がわからなくなるCさんの状態は、遂行機能障害に該当します。
解説
遂行機能障害では、何をしたいかという目的があっても、必要な行動を計画し、順序立てて始め、状況に応じて修正し、最後まで終えることが難しくなります。料理、掃除、買い物、金銭管理、家電製品の操作など、複数の手順が必要な生活行為で現れやすい障害です。
Cさんは電気湯沸しポットが何であるかはわかっていますが、操作方法がわからず、お茶を入れる手順にも混乱しています。そのため、湯が出ない理由を「ポットが壊れている」と捉えていると考えられます。これは、物そのものを認識できない失認ではなく、目的に向けて手順を組み立てて実行することが難しい遂行機能障害に該当します。
支援では、本人の誤りを責めたり、何度も口頭で説明したりするだけではなく、一つずつ短い声かけをする、手順を絵や写真で示す、操作箇所へわかりやすい印を付けるなど、認知機能を補う環境調整を行います。熱湯を扱うため、安全性の確認も必要です。
ひっかけポイント
ポットを使えないからといって、直ちに失認や失行とは判断しません。Cさんはポットをポットとして認識しています。複数の手順を計画し、順番に実行できない点が遂行機能障害の手がかりです。
介護実践でのポイント
「壊れていません」と否定する前に、実際の故障がないかを確認し、Cさんがどの段階で困っているかを観察します。手順を一つずつ伝える、写真や印を活用する、安全機能のある機器を検討するなど、本人ができる方法へ環境を調整します。
選択肢の確認
1.空間認知障害
誤りです。
空間認知障害は、物の位置、方向、距離、場所の関係などを正しく把握することが難しい状態です。この事例では、空間関係の把握が主な問題ではありません。
2.視覚認知障害
誤りです。
視覚認知障害は、見えている形、色、物の位置関係などの視覚情報を正しく処理することが難しい状態です。Cさんがポットを視覚的に認識できていないという記述はありません。
3.遂行機能障害
正しいです。
目的を達成するための手順を計画し、順番に実行することが難しい状態です。ポットの操作やお茶を入れる順番に混乱するCさんの状態に該当します。
4.失認
誤りです。
失認は、視力などの感覚機能が保たれていても、見たり聞いたりした物や人を認識できない状態です。Cさんは電気湯沸しポットを認識し、「壊れている」と訴えています。
5.観念運動失行
誤りです。
観念運動失行は、運動麻痺がなく動作の意味も理解しているのに、口頭指示や模倣に応じて学習した目的動作をうまく実行できない状態です。この事例の中心は、複数の行動を計画し順序立てることの障害です。
覚えるポイント
- 遂行機能は、計画、開始、順序立て、修正、完了に関わる。
- 遂行機能障害は、料理、掃除、買い物、家電操作などで現れやすい。
- 失認は、感覚が保たれていても対象を認識できない状態である。
- 失行は、運動機能が保たれていても目的のある動作を実行できない状態である。
- 本人の失敗を責めず、工程を分けて一つずつ支援する。
- 絵、写真、表示、印などで手順をわかりやすくする。
- 認知症によるものと決めつけず、機器の故障や環境上の問題も確認する。