36Q116|第36回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題114から問題116までについて答えなさい。 〔事 例〕 Cさん(59歳、男性)は、妻(55歳)と二人暮らしであり、専業農家である。Cさんはおとなしい性格であったが、最近怒りやすくなったと妻は感じていた。Cさんは毎日同じ時間に同じコースを散歩している。ある日、散歩コースの途中にあり、昔からよく行く八百屋から、「Cさんが代金を支払わずに商品を持っていった。今回で2回目になる。お金を支払いにきてもらえないか」と妻に連絡があった。妻がCさんに確認したところ、悪いことをした認識がなかった。心配になった妻がCさんと病院に行くと、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)と診断を受けた。妻は今後同じようなことが起きないように、Cさんの行動を常に見守り、外出を制限したが、疲労がたまり、今後の生活に不安を感じた。そこで、地域包括支援センターに相談し、要介護認定の申請を行い、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することになった。 その後、妻に外出を制限されたCさんは不穏となった。困った妻が訪問介護員(ホームヘルパー)に相談したところ、「八百屋に事情を話して事前にお金を渡して、Cさんが品物を持ち去ったときは、渡したお金から商品代金を支払うようにお願いしてはどうか」とアドバイスを受けた。 訪問介護員(ホームヘルパー)が意図したCさんへの関わりをICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)に当てはめた記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 4
正答
4.参加への影響を意図して、環境因子に働きかける。
この問題のポイント
訪問介護員は、Cさんの前頭側頭型認知症という健康状態や脱抑制を直接変えようとしているのではありません。八百屋との連携や代金を支払う仕組みという環境を調整し、Cさんが住み慣れた地域で散歩や買い物を続けられるようにしています。
解説
ICFでは、人の生活機能を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」という側面から捉え、それらが健康状態、環境因子、個人因子と相互に影響し合うと考えます。
「参加」とは、家庭生活、仕事、地域活動などの生活・人生場面への関わりです。Cさんにとって、毎日決まったコースを散歩し、昔から利用している八百屋へ行くことは、住み慣れた地域で続けてきた生活への参加と捉えられます。
「環境因子」とは、本人を取り巻く物的環境、人的・社会的環境、人々の態度、制度やサービスなどです。八百屋に事情を説明し、事前に預けたお金から商品代金を受け取ってもらう仕組みをつくることは、八百屋との関係や支払い方法という社会的環境を調整する関わりです。
この環境調整によって、Cさんを常に監視したり外出そのものを禁止したりするのではなく、金銭上のトラブルを防ぎながら、散歩や地域での生活を続けられる可能性が高まります。したがって、「参加への影響を意図して、環境因子に働きかける」が最も適切です。
なお、ICFの各構成要素は一方向に影響するものではありません。環境を整えることで参加しやすくなり、活動や心理状態、家族の負担にもよい影響を与える可能性があります。
ひっかけポイント
八百屋で商品を取る動作だけを見ると「活動」に注目しやすくなります。しかし、訪問介護員の提案は、身体機能や動作そのものを訓練するものではありません。八百屋という地域の環境を調整して、Cさんの地域生活への参加を続ける支援です。
介護実践でのポイント
地域の人や店舗へ事情を伝える場合は、本人の意思と同意を確認し、共有する情報を支援に必要な範囲に限定して、個人情報を守ります。預ける金額、使用記録、精算方法、管理者を明確にし、本人の金銭管理能力と権利にも配慮します。提案した方法が本人の安心、地域生活の継続、家族負担の軽減につながっているかを確認し、うまくいかないときは別の環境調整を検討します。
選択肢の確認
1.個人因子への影響を意図して、健康状態に働きかける。
誤りです。
健康状態はCさんの前頭側頭型認知症などを指します。八百屋との支払い方法を調整する提案は、病気そのものへ働きかけて個人因子を変えるものではありません。
2.健康状態への影響を意図して、心身機能に働きかける。
誤りです。
心身機能への働きかけとは、身体や精神の機能に対する訓練や治療などです。本事例では、脱抑制などの機能を直接改善して健康状態を変えようとしているのではありません。
3.活動への影響を意図して、身体構造に働きかける。
誤りです。
身体構造とは、脳、臓器、四肢などの解剖学的な部分です。訪問介護員の提案は、Cさんの身体構造へ働きかける支援ではありません。
4.参加への影響を意図して、環境因子に働きかける。
正しいです。
八百屋との連携や事前に代金を預ける仕組みは、Cさんを取り巻く人的・社会的環境への働きかけです。それにより、Cさんが散歩や買い物を含む地域生活への参加を続けられるようにしています。
5.環境因子への影響を意図して、個人因子に働きかける。
誤りです。
個人因子には、年齢、生活歴、価値観、性格など、その人固有の背景があります。本事例ではCさん自身の個人因子を変えようとするのではなく、外部の環境を調整して参加を支えています。
覚えるポイント
- ICFの生活機能は、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」で捉える。
- 活動は、個人が課題や行為を遂行することである。
- 参加は、生活・人生場面に関わることである。
- 環境因子には、物的環境、人的・社会的環境、人々の態度、制度やサービスがある。
- 環境因子は、生活機能の促進因子にも阻害因子にもなる。
- 環境を調整することで、本人の地域生活への参加を支えられる。
- 地域と連携するときも、本人の意思、個人情報、金銭管理上の安全を守る。