35Q120第35回 介護福祉士国家試験 過去問

総合問題総合問題

次の事例を読んで,問題 120 から問題 122 までについて答えなさい。 〔事 例〕Dさん(38 歳,男性,障害支援区分 3 )は, 1 年前に脳梗塞(cerebral infarction)を発症し左片麻痺となった。後遺症として左同名半盲,失行もみられる。現在は週 3 回,居宅介護を利用しながら妻と二人で生活している。 ある日,上着の袖に頭を入れようとしているDさんに介護福祉職が声をかけると,「どうすればよいかわからない」と答えた。普段は妻がDさんの着替えを手伝っている。食事はスプーンを使用して自分で食べるが,左側にある食べ物を残すことがある。Dさんは,「左側が見づらい。動いているものにもすぐに反応ができない」と話した。 最近は,日常生活の中で,少しずつできることが増えてきた。Dさんは,「人と交流する機会を増やしたい。また,簡単な生産活動ができるようなところに行きたい」と介護福祉職に相談した。 Dさんにみられた失行として,適切なものを 1 つ選びなさい。

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正解: 3

正答

3.着衣失行

この問題のポイント

Dさんは、上着を着ようとして「袖に頭を入れようとする」という誤りを示しています。衣服の各部分と自分の身体との位置関係が分からず、着衣動作を正しく組み立てられない状態は、着衣失行です。

解説

失行とは、運動麻痺などの身体機能の低下だけでは説明できない、学習された目的動作の遂行障害です。Dさんには左片麻痺がありますが、「上着の袖に頭を入れようとする」「どうすればよいか分からない」という行動は、左手足が動かしにくいだけでは説明できません。頭は襟ぐり、腕は袖に通すという、衣服の各部分と身体との空間的な対応が乱れています。

着衣失行では、衣服の上下・表裏・左右が分からない、袖に足を入れようとする、衣服と身体の位置を合わせられない、着る順序で混乱するなどがみられます。本事例では、着衣という特定の行為で典型的な誤りが示されています。

事例には左同名半盲もあります。左側の食べ物を残すことや「左側が見づらい」という訴えは視野障害と関連しますが、「上着の袖に頭を入れる」という誤りを直接表す失行の種類は着衣失行です。

ひっかけポイント

「空間関係の把握」という言葉だけで構成失行を選ばないようにします。構成失行は図形の模写や積み木の構成など、形を組み立てる行為の障害です。衣服と身体の対応が崩れて着られない場合は、着衣失行です。

介護実践でのポイント

できない部分をすぐに代行せず、衣服を一着ずつ見えやすい位置に置き、上下・表裏を整え、短い言葉で一工程ずつ伝えます。必要に応じて印、写真、実演などを使い、本人ができる工程を生かします。作業療法士などと支援方法を統一することも大切です。

選択肢の確認

1.構成失行
誤りです。 構成失行は、図形を写す、積み木を組み立てるなど、部分を空間的に配置して一つの形を作ることが難しくなる状態です。

2.観念失行
誤りです。 観念失行は、複数の物品を用いる一連の行為の意味や順序が崩れ、道具を目的に沿って使えなくなる状態です。

3.着衣失行
正しいです。 衣服の各部分と身体との位置関係を捉えにくくなり、袖に頭を入れようとするなど、衣服を正しく着ることができない状態です。

4.顔面失行
誤りです。 顔面失行は、指示に応じて口を開ける、舌を出す、頬を膨らませるなど、顔面や口腔の意図的な動作を行いにくくなる状態です。

5.観念運動失行
誤りです。 観念運動失行は、動作の意味を理解していても、指示や模倣に応じて敬礼や手招きなどの学習された単一動作を意図的に行いにくくなる状態です。

覚えるポイント

  • 着衣失行は、衣服の上下・表裏・各部分と身体との対応が分からず、正しく着られない状態である。
  • 構成失行は形の構成、観念失行は複数物品を用いる一連の行為、観念運動失行は指示や模倣による学習動作の障害である。
  • 同じ事例に複数の障害があっても、設問が示す具体的な行為から分類する。

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