34Q97|第34回 介護福祉士国家試験 過去問
Kさん(83歳、女性、要介護1)は、3年前にアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断された。一人暮らしで訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用している。金銭管理は困難であり、長男が行っている。 最近、認知症(dementia)の症状がさらに進み、訪問介護員(ホームヘルパー)がKさんの自宅を訪問すると、「通帳を長男の嫁が持っていってしまった」と繰り返し訴えるようになった。 考えられるKさんの症状として、適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 1
正答
1.もの盗られ妄想
この問題のポイント
認知症の人が、しまった場所や家族に管理を任せた事実を忘れ、「家族に盗られた」と確信して繰り返し訴える症状は、もの盗られ妄想です。記憶障害に、不安や喪失感などが重なって生じることがあります。
解説
妄想とは、事実と異なる内容を強く確信し、周囲が説明しても訂正することが難しい状態です。もの盗られ妄想は被害妄想の一つで、アルツハイマー型認知症では比較的早い段階からみられることがあります。
Kさんは金銭管理が困難になり、長男が通帳を管理しています。しかし、その経緯を記憶に保持できず、手元に通帳がないという現在の状況から、「長男の嫁が持っていった」と理解していると考えられます。本人にとっては通帳が見つからないことや手元にないことは現実の不安であり、わざと事実と異なることを言っているのではありません。
もの盗られ妄想では、財布、通帳、印鑑、衣類などが見つからないと、身近で日常的に関わる家族や介護者が疑われやすくなります。背景には、記憶障害だけでなく、自分で物や金銭を管理できなくなった喪失感、将来への不安、孤独、周囲への不信などが関係する場合があります。
対応では、「お嫁さんは盗んでいません」と強く否定したり、間違いを証明しようとしたりすると、本人が理解されていないと感じて不安や怒りを強めることがあります。「通帳がなくて心配なのですね」と気持ちを受け止め、保管場所や管理方法を確認し、必要に応じて一緒に探すなど、安心につながる支援を行います。
ただし、認知症があるからといって訴えをすべて妄想と決めつけてはいけません。通帳や金銭の管理状況を家族や関係職種と客観的に確認し、経済的虐待や不適切な管理の可能性がないかも確かめる必要があります。
ひっかけポイント
「お金がない」という訴えでも、誰かに盗られたと確信するのはもの盗られ妄想、自分は破産して生活できないと確信するのは貧困妄想です。訴えの内容を正確に読み分けます。
介護実践でのポイント
まず本人の不安を受け止め、頭から否定しません。そのうえで、通帳の保管場所、出入金、管理者を客観的に確認し、本人にもわかりやすい管理方法を家族・介護支援専門員などと検討します。急に妄想が強くなった場合は、体調、薬、環境変化、せん妄の可能性も確認します。
選択肢の確認
1.もの盗られ妄想
正しいです。
自分の物を誰かが盗んだと事実に反して確信する妄想です。通帳を長男の嫁が持っていったと繰り返すKさんの症状に該当します。
2.心気妄想
誤りです。
心気妄想は、医学的な根拠がない、または説明を受けても、自分は重い病気にかかっていると強く確信する妄想です。
3.貧困妄想
誤りです。
貧困妄想は、実際には生活できる資産があっても、「お金が全くない」「破産してしまった」などと確信する妄想です。
4.罪業妄想
誤りです。
罪業妄想は、「取り返しのつかない罪を犯した」「周囲に重大な迷惑をかけた」などと、自分を過度に責める妄想です。
5.嫉妬妄想
誤りです。
嫉妬妄想は、根拠がないのに配偶者やパートナーが浮気をしていると確信する妄想です。
覚えるポイント
- もの盗られ妄想は、自分の物を誰かに盗られたと確信する被害妄想である。
- アルツハイマー型認知症では比較的早い時期からみられることがある。
- 訴えを強く否定せず、背景にある不安や喪失感を受け止める。
- 心気妄想は病気、貧困妄想は破産、罪業妄想は罪、嫉妬妄想は配偶者の不貞に関する妄想である。
- 認知症の人の訴えでも、実際の紛失や経済的虐待がないか客観的に確認する。