119F71|第119回 医師国家試験 過去問
洞調律に復帰後、緊急冠動脈造影検査のためカテーテル室に移動した。平均血圧60 mmHg以上の維持が困難で、心拍数も120/分を超えて不穏状態となった。 次に行う治療で適切なのはどれか。
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正解: e
正解
e ECMO〈Extracorporeal membrane oxygenation〉
病態の整理
この症例は、
- II、III、aVF の ST 上昇
- 右側胸部誘導でも ST 上昇
- 心エコーで右室壁運動低下
- 低血圧
- その後に致死性不整脈を起こして除細動後に洞調律へ復帰
という流れから、右室梗塞を伴う下壁 STEMI による重症心原性ショックと考えます。
洞調律に戻っても、
- 平均血圧 60 mmHg 以上の維持が困難
- 心拍数 120/分超
- 不穏状態
であり、循環不全が持続していることが重要です。
この段階では、再灌流治療までの橋渡しとして、より強力な循環補助が必要です。
なぜ ECMO か
ECMO、実臨床では主に VA-ECMO を想定します。
VA-ECMO は、心拍出が保てない急性心原性ショックに対して、
- 全身循環の補助
- 酸素化の補助
- 冠動脈インターベンションまでの時間稼ぎ
を同時に行えるのが利点です。
この症例では、右室梗塞が強く、さらに心停止蘇生後で血行動態が極めて不安定です。
IABP よりも強力で即効性のある補助循環が必要であり、ECMO が最も適切です。
各選択肢の検討
a 植込み型除細動器
誤りです。植込み型除細動器は慢性期の二次予防で考える治療であり、今この場の急性循環不全を立て直す治療ではありません。b 永久ペースメーカ
誤りです。永久ペースメーカは持続する高度徐脈や房室ブロックで検討します。本症例は頻脈であり、適応ではありません。c 補助人工心臓〈VAD〉
誤りです。一般に外科的導入を要する補助人工心臓は、急性心筋梗塞のカテーテル室で直ちに行う次の一手としては現実的ではありません。しかも右室梗塞主体のショックで、まず必要なのは迅速な全身循環補助です。d 大動脈内バルーンパンピング〈IABP〉
誤りです。IABP は左室後負荷軽減と冠灌流改善が主な作用で、右室梗塞主体の重症ショックでは補助力が不十分です。補助循環としての強さは ECMO に劣ります。e ECMO〈Extracorporeal membrane oxygenation〉
正しいです。急性心筋梗塞に伴う難治性心原性ショックに対し、再灌流治療までの循環維持として最も適しています。
ひっかけポイント
この問題で迷いやすいのは IABP と ECMO の使い分けです。
IABP が向く場面
- 左室補助が主な目的
- 比較的軽い循環不全
- ECMO ほど強力な補助が不要な場面
ECMO が向く場面
- 血圧維持が困難
- 心停止後
- 強い心原性ショック
- 右室梗塞を含めた重篤な循環破綻
この症例は明らかに後者です。
まとめ
この患者は、右室梗塞を伴う STEMI の難治性心原性ショックです。
次に行うべき治療は、再灌流までの強力な補助循環としての ECMO です。