115B085|第115回 歯科医師国家試験 過去問
79 歳の女性。上顎右側犬歯の咬合痛と口蓋側歯肉の腫脹を主訴として来院した。 3日前から症状を自覚するようになったという。骨粗鬆症のため 1年前からビタミ ンD 製剤を服用している。打診痛はあるが自発痛はない。初診時の口腔内写真 (別 冊No. 38A とエックス線画像 (別冊No. 38B を別に示す。歯周組織検査結果の一 部を表に示す。 ④⑧唇 側* ④ ⑧ 歯 種 23口蓋側* 33⑧ 3431動揺度** 1* :プロービング深さ (mm )○印:プロービング時の出血 ** :Miller の判定基準 3に対する適切な対応はどれか。 1つ選べ。

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正解: e
正答
e
この問題のポイント
根管治療済みの単根歯に、咬合痛、局所的な歯肉腫脹、限局した深い歯周ポケット、歯根に沿う骨吸収像を認める場合は、垂直性歯根破折を疑います。上顎犬歯のような単根歯で垂直性歯根破折が生じた場合、基本的には抜 歯が適切です。
解説
症例は79歳の女性で、上顎右側犬歯に3日前から咬合痛と口蓋側歯肉腫脹が生じています。自発痛はありませんが打診痛があります。
口腔内写真では、補綴装置が装着された歯の口蓋側に限局した腫脹を認めます。歯周組織検査では、周囲すべてが一様に深いのではなく、唇側・口蓋側の一部に深いプロービング値が示されています。このような孤立性の深い歯周ポケットは、歯根表面に沿って感染経路が形成される垂直性歯根破折を疑う重要な所見です。
エックス線画像では根管充塡と支台築造が行われた歯であり、歯根周囲に破折に伴う骨吸収を疑う所見があります。垂直性歯根破折では、破折線から細菌が歯周組織へ侵入し、歯根に沿った狭く深い骨吸収や歯肉膿瘍・瘻孔を生じます。
単根歯では、破折した歯根だけを切除して残りを保存することができません。破折部を接着して長期的に安定させる確立した方法もないため、保存予後は不良であり、感染源を除去するために抜歯します。
骨粗鬆症に対して服用しているのはビタミンD製剤です。ビタミンD製剤は、ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体などの骨吸収抑制薬とは異なり、それ自体を理由に必要な抜歯を避ける薬剤ではありません。
症例問題の解き方
根管治療済み歯の咬合痛では、根尖性歯周炎だけでなく垂直性歯根破折を考えます。限局した深いポケット、歯肉膿瘍・瘻孔、歯根に沿う骨吸収を組み合わせて判断します。
画像の確認
実画像では、根管治療済み上顎右側犬歯の口蓋側に限局した膿瘍様膨隆があり、プローブが同歯の一部で8 mmまで深く入っている。エックス線写真では歯根側面に沿う細長い透過像がみられ、単根歯の垂直性歯根破折を疑わせるため、保存ではなく抜歯を選ぶ根拠になる。
選択肢の確認
a.経過観察
誤り。
腫脹、打診痛、限局した深い歯周ポケットがあり、破折部から感染が続いていると考えられます。無処置で経過観察する状況ではありません。
b.スケーリング・ルートプレーニング
誤り。
歯周炎に対する基本処置ですが、歯根の破折線そのものを除去・封鎖することはできません。垂直性歯根破折による感染は改善できません。
c.感染根管治療
誤り。
根管内感染が主因であれば適応になりますが、本症例では根管治療済み歯に垂直性歯根破折を示唆する所見があります。根管を再治療しても破折線を介する感染経路は残ります。
d.歯根尖切除
誤り。
歯根尖切除は、通常の根管治療で治癒しない根尖部病変などに対する外科的歯内療法です。歯根の長軸方向へ及ぶ垂直性歯根破折を治療する方法ではありません。
e.抜 歯
正答。最も適切です。
単根歯の垂直性歯根破折は保存予後が不良です。破折した歯と感染源を除去するため、抜歯を行います。
覚えるポイント
- 根管治療済み歯の孤立性の深い歯周ポケットは、垂直性歯根破折を疑う所見です。
- 垂直性歯根破折では、歯根に沿う骨吸収、歯肉膿瘍、瘻孔を認めることがあります。
- 単根歯の垂直性歯根破折は、原則として抜歯の適応です。