115B054第115回 歯科医師国家試験 過去問

歯科臨床口腔外科学

76 歳の女性。左側口底部の腫脹を主訴として来院した。かかりつけ歯科医にて 指摘されたという。触診で粘膜下に境界明瞭なやや硬い腫瘤を触れる。舌下小丘か らの唾液の流出は良好である。初診時の口腔内写真 (別冊No. 24A 、造影CT (別 冊No. 24B 、MRI 脂肪抑制T2 強調像 (別冊No. 24C 及び生検時のH-E 染色病理 組織像 (別冊No. 24D を別に示す。 診断名はどれか。 1つ選べ。

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正解: e

正答

e

この問題のポイント

口底部の境界明瞭な硬い腫瘤に対し、画像と病理組織像を組み合わせて唾液腺腫瘍を診断します。腺様囊胞癌では、浸潤性増殖と神経周囲浸潤、篩状構造が重要です。

解説

症例は76歳で、左側口底部に粘膜下のやや硬い腫瘤を認めます。舌下小丘からの唾液流出が良好であるため、顎下腺管の閉塞や唾石による腫脹とは考えにくく、口底部の唾液腺由来腫瘍を鑑別します。

腺様囊胞癌は唾液腺に発生する悪性腫瘍で、小型で濃染する腫瘍細胞が腺管状、篩状、充実性に増殖します。篩状構造では、胞巣内に多数の小腔がみられ、いわゆるスイスチーズ状を呈します。

神経周囲浸潤を起こしやすく、疼痛や知覚異常を伴うことがあります。発育は比較的緩徐でも、局所再発や肺などへの晩期遠隔転移があるため、長期的な経過観察が必要です。

画像・病理像で見るポイント
CTと脂肪抑制T2強調MRIでは、左側口底部に境界明瞭な充実性腫瘤を認めます。病理では、小型腫瘍細胞が多数の偽嚢胞腔を囲む篩状構造を作り、腔内に基底膜様物質を認めます。この組織像が腺様囊胞癌の決め手です。

画像の確認

実画像では、左口底粘膜下に小さな膨隆があり、CTと脂肪抑制T2強調MRIで同部に境界明瞭な充実性腫瘤が描出されている。組織像では小型細胞が多数の円形腔を取り囲み、腔内に好酸性物質を含む篩状・管状構造がみられる。この可視所見が腺様嚢胞癌の正答を支える。

選択肢の確認

a.多形腺腫
誤り。
多形腺腫は良性唾液腺腫瘍で、上皮・筋上皮成分と粘液腫様・軟骨様間質が混在します。通常は可動性のある緩徐な腫瘤で、腺様囊胞癌の浸潤性・篩状像とは異なります。

b.粘表皮癌
誤り。
粘表皮癌は粘液細胞、類表皮細胞、中間細胞から構成されます。病理でこれらの混在を確認しますが、腺様囊胞癌の典型的な篩状構造とは異なります。

c.ラヌーラ
誤り。
ラヌーラは舌下腺由来の粘液漏出による嚢胞性病変で、一般に軟らかく波動を触れ、青みを帯びることがあります。硬い充実性腫瘤ではありません。

d.類皮囊胞
誤り。
類皮囊胞は角化性上皮で裏装され、皮膚付属器を伴う嚢胞です。口底正中部に生じ、弾性軟から捏形性を示すことがありますが、悪性唾液腺腫瘍の病理像とは一致しません。

e.腺様囊胞癌
正しい。
口底部唾液腺由来の硬い腫瘤としてみられ、病理で篩状構造や神経周囲浸潤を示す悪性腫瘍です。

覚えるポイント

  • 腺様囊胞癌は篩状構造と神経周囲浸潤が重要です。
  • 緩徐に増大しても再発・遠隔転移があるため長期経過観察が必要です。
  • ラヌーラは嚢胞性で軟らかく、充実性唾液腺腫瘍とは異なります。

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