38Q123第38回 介護福祉士国家試験 過去問

総合問題総合問題

次の事例を読んで、問題123から問題125までについて答えなさい。 〔事 例〕 Aさん(50歳、男性、障害支援区分4)は、1年前の交通事故の後遺症で、右片麻痺{みぎかたまひ}、高次脳機能障害(higher brain dysfunction)、失語症(aphasia)となった。現在は障害者支援施設で生活している。日中は、車いすに座って過ごしているが、すぐに右肩が下がり上半身は右へ傾いた姿勢になる。ある日、B介護福祉職がAさんに姿勢の傾きを直す方法を伝えようとすると、Aさんは大声でどなり、物を投げた。B介護福祉職は、以前からAさんとのコミュニケーションに悩んでいたため、C介護主任に相談することにした。C介護主任の問いかけに答えるなかで、B介護福祉職は自分自身の言動を振り返ることができ、Aさんに伝わらない焦りと、子どもに言い聞かせるような口調が、Aさんの感情を害していたことに気づいた。その後、コミュニケーション方法を工夫し、Aさんに姿勢の傾きを直す方法を説明し、同意を得ることができた。 毎週、Aさんは妻との面会を楽しみにしている。しかし、妻はAさんの将来に不安を感じて、B介護福祉職に、「夫の障害について、情報交換や勉強がしたい。そのようなところがあれば紹介してほしい」と相談した。 次のうち、C介護主任がB介護福祉職への対応に用いた手法として、最も適切なものを1つ選びなさい。

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正解: 2

正答

2.コーチング(coaching)

この問題のポイント

人材育成や職員支援の手法を、事例中のかかわり方から見分ける問題です。

C介護主任は、答えを一方的に教えたのではなく、問いかけによってB介護福祉職の振り返りを促しました。B介護福祉職が自分の焦りや口調に気づき、改善方法を考えられたことから、用いられた手法はコーチングです。

解説

コーチングは、相手との対話、傾聴、質問、承認などを通して、相手が自分の経験や考えを振り返り、自ら課題や解決方法に気づき、行動へつなげられるように支援する方法です。

事例では、C介護主任の問いかけに答えるなかで、B介護福祉職が自分自身の言動を振り返っています。そして、「伝わらない焦り」と「子どもに言い聞かせるような口調」がAさんの感情を害していたことに、自分で気づきました。この過程がコーチングの特徴です。

ティーチングは、必要な知識や技術、手順を指導者が具体的に教える方法です。新人に車いすの調整方法を実演して教える場合などには有効ですが、この場面の中心は、知識を一方的に伝えることではなく、問いかけによる自己理解と気づきです。

Aさんが大声でどなり、物を投げたという行動だけを切り取って、本人を非難してはいけません。失語症によって思いを言葉にしにくいこと、高次脳機能障害によって情報処理や感情の調整に困難がある可能性、B介護福祉職の焦りや子ども扱いする口調など、行動の背景を考える必要があります。

Aさんは50歳の成人です。障害があっても、一人の大人として尊重される権利があります。短く具体的な言葉を使う、一度に一つずつ伝える、返答を急かさない、図や身ぶりを用いる、理解できたかを確認する、支援の前に同意を得るといった工夫が重要です。

ひっかけポイント
「教える人が上司だからティーチング」とは限りません。上司が質問を用いて、部下自身の振り返りと気づきを促している場合はコーチングです。

介護実践でのポイント
職員の振り返りは、責めるためではなく、利用者の尊厳を守り、よりよい支援へ変えるために行います。本人の行動の背景と、支援者自身の言動の両方を検討することが大切です。

選択肢の確認

1.コンサルテーション(consultation)
適切ではありません。
コンサルテーションは、専門的な知識や技術をもつ人が、別の専門職や組織から相談を受け、課題の整理や助言を行う方法です。この事例の中心は、専門家が解決策を助言することではなく、問いかけによってB介護福祉職自身の気づきを促したことです。

2.コーチング(coaching)
正答。最も適切です。
C介護主任は問いかけを行い、B介護福祉職が自らの言動を振り返って、焦りや不適切な口調に気づくことを支援しました。相手の内省と自発的な改善を促すコーチングに該当します。

3.フォロワーシップ(followership)
適切ではありません。
フォロワーシップは、組織の構成員がリーダーを支え、主体的に意見や行動を示して、チームの目標達成へ貢献するあり方です。部下の振り返りを促す面談手法を指す言葉ではありません。

4.ティーチング(teaching)
適切ではありません。
ティーチングは、指導者が知識、技術、正しい手順などを相手に教える方法です。事例では、C介護主任が正解を直接教えるのではなく、B介護福祉職自身に考えさせて気づきを促しているため、コーチングです。

5.メンバーシップ(membership)
適切ではありません。
メンバーシップは、チームの一員として役割と責任を果たし、協働する姿勢を指します。質問によって職員の自己理解を深める人材育成の手法ではありません。

覚えるポイント

コーチングは、質問、傾聴、承認によって、相手自身の気づきと行動を促します。

ティーチングは、指導者が必要な知識や技術を具体的に教えます。

コンサルテーションは、専門家が別の専門職や組織の相談に応じ、専門的な助言を行います。

フォロワーシップとメンバーシップは、チーム内での役割や姿勢を表す言葉です。

利用者との関係がうまくいかないときは、利用者の障害だけでなく、支援者自身の言葉、態度、環境も振り返ります。

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