38Q117|第38回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題117から問題119までについて答えなさい。 〔事 例〕 Aさん(85歳、女性、要介護1)は、B住居型有料老人ホームで暮らしている。子どもはなく、親族もいない。Aさんは現在、外部の事業所から訪問介護サービスを週2回利用している。Aさんは駐車場を経営していて、毎月その収入がある。 最近、C訪問介護員(ホームヘルパー)は、Aさんの居室内の冷蔵庫の中に同じ食材がたくさん入っていることが多く、気になっていた。ある日、C訪問介護員(ホームヘルパー)がAさんに尋ねると、「近所のスーパーに買い物に行くのが楽しみだが、冷蔵庫の中に何があるのか忘れてしまい、同じものばかり買ってしまう」と答えた。また、「今は、毎月振り込まれる駐車場収入の管理ができているが、今後管理できなくなることが不安だ」と話した。その後、Aさんは、初期のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)の診断を受けた。 次のうち、Aさんが不安に思っている駐車場収入の管理について、訪問介護事業所のサービス提供責任者がAさんに提案する制度として、最も適切なものを1つ選びなさい。
解答・解説を見る
正解: 1
正答
1.成年後見制度
この問題のポイント
認知症によって将来の財産管理に不安を感じている人を支える制度を選ぶ問題です。
Aさんは、現在は駐車場収入を管理できていますが、今後、判断能力が低下して管理できなくなることを心配しています。財産管理や契約などの法律行為を支援する成年後見制度が最も適切です。
解説
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な人について、財産管理や契約などを法律面から保護し、支援する制度です。大きく「法定後見制度」と「任意後見制度」に分けられます。
法定後見制度では、すでに判断能力が不十分になった人について、家庭裁判所が成年後見人、保佐人、補助人を選任します。本人の判断能力の程度に応じて、代理権、同意権、取消権などの範囲が定められます。
一方、任意後見制度では、判断能力が十分に保たれているうちに、本人が将来支援してもらう人と、生活、療養看護、財産管理などの支援内容をあらかじめ決めて、公正証書で任意後見契約を結びます。その後、本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、契約の効力が生じます。
Aさんは「今は管理できているが、今後管理できなくなることが不安だ」と、自分の将来について意思を表明しています。そのため、成年後見制度の内容を説明し、判断能力が十分に保たれている場合には、任意後見制度を含めて本人が今後の財産管理方法を選べるように支援することが考えられます。
認知症と診断されたことだけを理由に、本人には判断能力がないと決めつけてはいけません。分かりやすく情報を伝え、本人の理解や意思を確認し、できる限り本人自身の決定を支えます。成年後見制度を利用する場合も、本人の意思、心身の状態、これまでの生活や希望を尊重することが基本です。
ひっかけポイント
現在は財産を管理できているため成年後見制度は利用できない、と考えないようにします。将来に備える任意後見制度も、成年後見制度に含まれます。
介護実践でのポイント
制度を一方的に勧めたり、支援者が管理方法を決めたりするのではなく、Aさんが何を不安に感じ、どの範囲を誰に支援してほしいのかを丁寧に確認します。必要に応じて、地域包括支援センターや成年後見制度の相談窓口などにつなぎます。
選択肢の確認
1.成年後見制度
正しいです。 判断能力が不十分になった人の財産管理や契約などを法律面から保護し、支援する制度です。現在は管理できているAさんには、将来に備える任意後見制度を含めて説明することが考えられます。
2.生活保護制度
誤りです。 生活に困窮する人に対して、最低限度の生活を保障し、自立を助長する制度です。駐車場収入を将来管理できなくなることへの支援を目的とした制度ではありません。
3.老齢年金制度
誤りです。 老齢になった被保険者等に年金を給付し、所得を保障する社会保険制度です。本人に代わって駐車場収入や預貯金を管理する制度ではありません。
4.継続雇用制度
誤りです。 定年後も、希望する労働者を引き続き雇用するための制度です。Aさんの財産管理や判断能力の低下に備える制度ではありません。
5.後期高齢者医療制度
誤りです。 原則として75歳以上の人などを対象とする医療保険制度です。医療費の給付を行う制度であり、駐車場収入などの財産管理を支援する制度ではありません。
覚えるポイント
- 成年後見制度は、判断能力が不十分な人の財産管理や契約を法律面から支援する制度。
- 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度がある。
- 現在、判断能力が十分に保たれていて将来に備えたい場合は、任意後見制度を検討できる。
- 認知症の診断だけで判断能力がないと決めつけず、本人の意思決定を支えることが基本。
- 制度を利用するときも、本人の意思、尊厳、残されている力を尊重する。