76AM72第76回 診療放射線技師国家試験 過去問

理工学・放射線科学物質との相互作用重荷電粒子

陽子線の水に対する質量阻止能とエネルギーとの関係を図に示す。 10 MeV 重陽子線の水に対する質量阻止能[MeV・cm2・g-1]に最も近いのは どれか。

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正解: 4

正答

4

この問題のポイント

この問題では、図に示された 陽子線の質量阻止能を使って、10 MeV 重陽子線の質量阻止能を求めます。

ポイントは、重陽子線をそのまま 10 MeV の陽子線として読まないことです。

重陽子は陽子と同じ電荷 +e をもちますが、質量は陽子のおよそ 2 倍です。

そのため、10 MeV 重陽子線は、速度としては約 5 MeV 陽子線に対応します。

解説

質量阻止能は、荷電粒子が物質中を進むときに、単位質量厚さあたりで失うエネルギーを表します。

荷電粒子の阻止能は、おおまかに次の因子に強く依存します。

  • 粒子の電荷
  • 粒子の速度
  • 物質の性質

低エネルギー領域では、質量阻止能は概ね次のように考えられます。

質量阻止能 ∝ z^2 / v^2

ここで、

  • z:粒子の電荷
  • v:粒子の速度

です。

重陽子は、陽子と同じく電荷は +1 です。

ただし、重陽子の質量は陽子の約 2 倍です。

非相対論的には、運動エネルギー E は次の関係です。

E = 1/2 mv^2

同じ速度 v をもつためには、質量が 2 倍なら運動エネルギーも 2 倍になります。

つまり、

  • 10 MeV 重陽子
  • 5 MeV 陽子

は、おおよそ同じ速度をもちます。

重陽子と陽子は電荷が同じなので、同じ速度なら質量阻止能もほぼ同じとみなせます。

したがって、図では 10 MeV ではなく、5 MeV 付近の陽子線の質量阻止能を読み取ります。

図の 5 MeV 付近では、陽子線の水に対する質量阻止能はおよそ 80 MeV・cm2・g-1 です。

よって、10 MeV 重陽子線の質量阻止能に最も近いのは 80です。

ひっかけポイント
問題文は「10 MeV 重陽子線」です。
図は「陽子線」のグラフなので、10 MeV の位置をそのまま読むと誤ります。
重陽子は陽子の約 2 倍の質量をもつため、10 MeV 重陽子は 5 MeV 陽子と同程度の速度として読み替えます。

選択肢の確認

1.誤り。
20 MeV・cm2・g-1 は、図ではより高いエネルギー側の陽子線に近い値です。10 MeV 重陽子を 5 MeV 陽子相当として読むと小さすぎます。

2.誤り。
30 MeV・cm2・g-1 も、5 MeV 付近の陽子線質量阻止能より小さい値です。

3.誤り。
50 MeV・cm2・g-1 は、10 MeV 陽子線として読んだ場合に近い値です。しかし、この問題は 10 MeV 重陽子線なので、同じ速度の 5 MeV 陽子線として考える必要があります。

4.正しい。
10 MeV 重陽子線は、速度としては約 5 MeV 陽子線に相当します。図の 5 MeV 付近の質量阻止能はおよそ 80 MeV・cm2・g-1 であり、最も近い値です。

5.誤り。
100 MeV・cm2・g-1 は、5 MeV 付近よりさらに低エネルギー側の陽子線に近い値です。図の読み取りとしてはやや大きすぎます。

覚えるポイント

  • 質量阻止能は、荷電粒子の 電荷速度に強く依存します。
  • 重陽子は陽子と同じ電荷 +e をもちます。
  • 重陽子の質量は陽子の約 2 倍です。
  • 10 MeV 重陽子 ≒ 5 MeV 陽子と同じ速度として考えます。
  • 図から 5 MeV 陽子の質量阻止能を読むと、約 80 MeV・cm2・g-1です。
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