115B071第115回 歯科医師国家試験 過去問

全身管理医学・全身疾患

70 歳の男性。嚥下機能評価のため往診を依頼された。 2日前に就寝後 2時間で 息苦しくなって目が覚め、ベッド上で起き上がると楽になったという。訪問時、意 識は清明で、呼吸困難、喘鳴、咳嗽を呈した。心音聴診で雑音を認め、胸部聴診で 両側呼吸音の低下はなく、両下肺に水泡音を聴取した。直ちに救急車を要請した。 その時の生体モニタの画面 (別冊No. 32 )を別に示す。 救急要請した理由はどれか。 1つ選べ。

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正解: a

正答

a

この問題のポイント

就寝後に呼吸困難で目覚め、起き上がると楽になる発作性夜間呼吸困難・起坐呼吸と、両側下肺野の水泡音は、肺うっ血を伴う左心不全を示唆します。

解説

左心室のポンプ機能が低下すると、左心房から肺静脈へ血液がうっ滞し、肺毛細血管圧が上昇します。血管内の水分が肺間質や肺胞へ漏れ出すと、呼吸困難、咳嗽、喘鳴、水泡音が生じます。

臥位では下肢や腹部に貯留していた血液が胸部へ戻りやすくなり、肺うっ血が悪化します。そのため、就寝後しばらくして息苦しくなり、座位になると静脈還流量が減って楽になることがあります。

本症例では、両側の呼吸音低下がなく、両下肺に水泡音を聴取しています。これは片側性の自然気胸より、両肺のうっ血・肺水腫に合致します。心音の雑音も、弁膜症など心不全の背景疾患を示す手掛かりです。

全身管理上の注意点
急性心不全が疑われる場合は歯科・嚥下評価を中止し、上体を起こして安静を保ち、酸素化とバイタルサインを確認しながら救急搬送を要請します。

画像の確認

実画像では、生体モニタに心拍数130/分、血圧138/85 mmHg、SpO2 92%が表示され、心電図は幅の狭いQRSを伴う頻拍である。低酸素化はあるが著明な低血圧や心室頻拍波形ではなく、起坐呼吸と両側水泡音を合わせると肺うっ血を伴う左心不全で救急要請したというaを支える。

選択肢の確認

a.左心不全
正しい。
発作性夜間呼吸困難、起坐呼吸、両下肺野の水泡音は、左心不全による肺うっ血・肺水腫の典型的所見です。

b.自然気胸
誤り。
自然気胸では通常、患側の呼吸音低下、胸痛、左右差を認めます。本症例では両側呼吸音の低下がなく、両下肺に水泡音があります。

c.心室頻拍
誤り。
心室頻拍では動悸、失神、循環不全などが問題になります。心電図所見の確認は必要ですが、夜間の起坐呼吸と両側水泡音を一貫して説明する主病態ではありません。

d.過換気症候群
誤り。
過換気症候群では不安、しびれ、呼吸性アルカローシスなどを認めますが、両下肺の水泡音や起坐呼吸は通常みられません。

e.心原性ショック
誤り。
心原性ショックでは著明な低血圧、冷汗、末梢循環不全、意識障害などを伴います。本症例は意識清明で、問われている中心病態は左心不全です。

覚えるポイント

  • 起坐呼吸+両側水泡音=左心不全による肺うっ血を疑います。
  • 気胸では患側呼吸音の低下が重要です。
  • 急性呼吸困難がある場合は、口腔・嚥下評価より救命対応を優先します。

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