9PM154|第9回 公認心理師国家試験 過去問
45 歳の男性A、中堅金融会社の人事労務担当者。会社の業績は好調であるが、このところ、メンタルヘルスの不調を来す従業員が立て続けに出現したため、健康管理室に勤務する公認心理師Bに相談した。Aが勤務する会社では、感染症対策として導入されたテレワークが制度として定着したところであった。従業員は、上司の指示に即応することが求められている。Bは、テレワークが導入されたことによる業務態様の変化が従業員の負担になっているのではないかと考え、Aに対策を検討するよう助言した。 考えられる対策として、適切なものを 2 つ選べ。
解答・解説を見る
正解: 3・5
正答
3、5
この問題のポイント
この事例では、テレワークの定着に伴う労働時間管理と心理的負担の軽減が問われています。
Aの会社では、従業員が上司の指示に即応することを求められています。テレワークでは、仕事と私生活の境界があいまいになりやすく、時間外・休日・深夜の連絡が続くと、常に仕事に縛られている感覚が強まり、メンタルヘルス不調につながることがあります。
そのため、時間外等のメール送付を抑制すること、パソコンの使用時間などを用いて労働時間を把握することが適切です。
解説
テレワークは、通勤負担の軽減、柔軟な働き方、業務効率化などの利点があります。一方で、労働時間と休息時間の境界があいまいになりやすく、孤立感、過重労働、コミュニケーション負担、常時接続による緊張が生じることがあります。
この事例では、会社の業績は好調ですが、メンタルヘルス不調の従業員が立て続けに出現しています。感染症対策として始まったテレワークが制度として定着し、従業員には上司の指示への即応が求められています。これは、勤務時間外であってもメールやチャットに反応しなければならないという心理的圧迫につながる可能性があります。
公認心理師Bは、個々の従業員の相談対応だけでなく、職場環境の要因にも注目しています。産業領域では、個人のストレス対処だけに焦点を当てるのではなく、業務量、労働時間、連絡ルール、上司のマネジメント、休息の確保などを含めて支援を考えることが重要です。
適切な対策としては、時間外・休日・深夜の上司からのメール送付を抑制し、勤務時間外に即応を求めないルールを整えることが挙げられます。また、テレワークでは実際の労働時間が見えにくくなるため、パソコンの使用時間の記録などを利用して労働時間を客観的に把握することも重要です。
産業・労働領域のポイント
テレワークでは、柔軟性だけでなく、労働時間の把握、休息時間の確保、連絡ルール、孤立予防、上司による過度な即応要求の抑制を検討します。
選択肢の確認
1.休憩時間の一斉付与
判定:適切とはいえない。
休憩時間を適切に確保すること自体は重要です。しかし、テレワークでは業務の柔軟性や個別の勤務状況を踏まえた管理が必要になります。この事例で問題となっているのは、上司の指示への即応要求や労働時間の見えにくさであり、休憩時間を一斉に付与することが中心的な対策とはいえません。
2.みなし労働時間の導入
判定:適切とはいえない。
みなし労働時間制は、実際の労働時間を把握しにくい場合に一定時間働いたものとみなす制度です。しかし、本事例では上司の指示に即応することが求められており、使用者の指揮命令下で働いている状況が考えられます。このような場合、労働時間を把握せずにみなし労働時間を導入することは、過重労働の見逃しにつながるおそれがあります。
3.時間外、休日又は深夜の上司からのメール送付の抑制
判定:適切。
時間外、休日、深夜に上司からメールが送られると、従業員は勤務時間外でも対応しなければならないと感じやすくなります。テレワークでは仕事と私生活の境界があいまいになりやすいため、勤務時間外の連絡を抑制することは、心理的負担の軽減と休息の確保に有効です。
4.テレワーク先から常時アクセス可能なシステムの設定
判定:適切とはいえない。
常時アクセス可能なシステムは、業務効率を高める面もありますが、従業員が常に仕事から離れられない状態を強める可能性があります。本事例では、すでに即応が求められていることが負担になっていると考えられるため、常時接続を強化する対策は適切ではありません。
5.パソコンの使用時間の記録などを利用した労働時間の把握
判定:適切。
テレワークでは、勤務実態が見えにくく、長時間労働や隠れた時間外労働が生じやすくなります。パソコンの使用時間の記録などを活用して労働時間を把握することは、過重労働の予防、健康管理、メンタルヘルス不調の早期発見に役立ちます。
覚えるポイント
- テレワークでは、仕事と私生活の境界があいまいになりやすいです。
- 時間外・休日・深夜の連絡を抑制することは、休息の確保と心理的負担の軽減につながります。
- テレワークでも、労働時間の適切な把握は重要です。
- 常時アクセスや即応要求は、過重労働やメンタルヘルス不調のリスクになります。
- 公認心理師は、個人支援だけでなく、職場環境や組織的対策にも目を向けます。