9PM138|第9回 公認心理師国家試験 過去問
26 歳の女性A、営業職。最近、記憶が途切れることがあると訴え、精神科クリニックを受診した。Aによると、半年前、重要な取引先との商談で失敗し、帰社後に上司から厳しく叱責された。その日の夜、手帳にメモがあるにもかかわらず、商談後半の記憶がすっかり抜け落ちていることにショックを受けた。その後、朝、鏡を見るとすでに身支度が済んでいることがあったり、出勤途中、気が付いたら会社の最寄り駅で降りていたが、電車に乗った記憶がなく、夢の中にいるように感じたことがあったりする。メールの返信が届いても、自分が相手に送信した覚えがなく、不安を感じることもあるという。 Aの病態理解のために実施する心理検査として、最も適切なものを 1 つ選べ。
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正解: 1
正答
1
この問題のポイント
この事例では、Aにみられる解離症状を評価する心理検査が問われています。
Aは、商談後半の記憶が抜け落ちる、身支度をした記憶がない、電車に乗った記憶がない、夢の中にいるように感じる、自分が送信したメールの記憶がないと訴えています。これは、解離性健忘、離人感・現実感消失、解離性の行動などを疑わせる内容です。
解説
DES は、Dissociative Experiences Scale の略で、解離体験尺度です。日常的な解離体験から臨床的に問題となる解離症状までを把握するために用いられます。
この事例では、Aは26歳の営業職女性で、半年前の商談失敗と上司からの叱責の後、記憶が抜け落ちる体験にショックを受けています。その後も、すでに身支度が済んでいる、会社の最寄り駅にいるが電車に乗った記憶がない、自分がメールを送った覚えがないといった、日常生活上の記憶の空白が反復しています。また、「夢の中にいるように感じた」という訴えは、離人感や現実感消失の理解にもつながります。
病態理解のためには、解離症状の程度や頻度、生活への影響を把握する必要があります。そのため、最も適切なのは DES です。
事例問題で見るポイント
記憶の空白、現実感のなさ、知らないうちに行動している体験がある場合は、解離症状を考えます。ストレス体験との関連、生活への支障、安全性も確認します。
選択肢の確認
1.DES
判定:最も適切。
DES は解離体験を評価する尺度です。Aには、記憶の途切れ、行動の記憶がない体験、夢の中にいるような現実感の変化がみられるため、病態理解のために DES を用いることが最も適切です。
2.IES-R
判定:適切とはいえない。
IES-R は、出来事インパクト尺度改訂版で、心的外傷後ストレス反応を評価する尺度です。侵入症状、回避症状、過覚醒などの評価に用いられます。本事例では、主に解離症状の把握が問われているため、DES がより適切です。
3.LSAS-J
判定:適切とはいえない。
LSAS-J は、社交不安症状を評価する尺度です。対人場面での不安や回避を測定します。Aの主訴は記憶の空白や現実感の変化であり、社交不安の評価が中心ではありません。
4.MMSE
判定:適切とはいえない。
MMSE は、認知機能を簡便に評価する検査で、認知症などのスクリーニングに用いられます。Aは26歳で、事例の中心は記憶の空白を伴う解離症状であり、認知症スクリーニングが最も適切とはいえません。
5.STAI
判定:適切とはいえない。
STAI は、状態不安と特性不安を評価する尺度です。Aには不安もありますが、病態理解の中心は解離体験の評価です。不安の程度を把握する補助としては考えられても、最も適切な検査ではありません。
覚えるポイント
- DESは、解離体験を評価する尺度です。
- 記憶の空白、知らないうちに行動している体験、現実感のなさは解離症状の手がかりです。
- IES-Rは、心的外傷後ストレス反応を評価します。
- LSAS-Jは、社交不安を評価します。
- STAIは、不安を評価します。
- 心理検査は、主訴と病態仮説に合うものを選びます。