9AM1第9回 公認心理師国家試験 過去問

発達心理学-07 老年期・喪失・悲嘆

P. Boss が提唱した概念で、認知症などにより、以前のその人とすっかり様子が変わり、身体的には存在しているが心理的に存在していないと、家族などが苦痛に感じる状態を表す概念として、最も適切なものを 1 つ選べ。

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正解: 4

正答

4

この問題のポイント

この問題では、P. Boss が提唱したあいまいな喪失の理解が問われています。

特に、認知症などで本人の身体はそこにある一方、家族が「以前のその人らしさが失われた」と感じる状態をどう捉えるかが重要です。

解説

あいまいな喪失は、喪失の境界がはっきりしないために、悲嘆が整理されにくく、周囲からも理解されにくい喪失体験を指します。

P. Boss は、あいまいな喪失を大きく2つに整理しました。

  • 身体的には不在だが、心理的には存在している喪失
  • 身体的には存在しているが、心理的には不在と感じられる喪失

本問の認知症の例は、後者に当たります。家族から見ると、本人は目の前にいるにもかかわらず、以前の性格、記憶、関係性、反応が大きく変化し、「よく知っていたあの人がいなくなってしまった」と感じることがあります。

このような喪失は、死別のように社会的に区切りが明確ではありません。そのため、家族は悲しみ、怒り、罪悪感、戸惑いを抱えながらも、自分の苦痛を言語化しにくいことがあります。

国家試験ではここを押さえる
認知症、行方不明、失踪、災害、重い精神疾患などでは、喪失が明確に完結しないことがあります。身体的存在と心理的存在のずれに注目します。

公認心理師としては、家族の苦痛を「介護負担」だけに還元せず、喪失体験として理解することが重要です。心理教育、家族支援、多職種連携を通して、家族が感じている複雑な感情を扱えるように支援します。

選択肢の確認

1.予期悲嘆
判定:誤り。
予期悲嘆は、死別や重大な喪失が近い将来に起こると予測される段階で生じる悲嘆です。終末期医療や重い疾患の進行過程でみられることがあります。本問は、身体的には存在しているが心理的には存在していないと感じられる状態を問うているため、最も適切ではありません。

2.複雑性悲嘆
判定:誤り。
複雑性悲嘆は、死別後の悲嘆反応が長期化し、強い苦痛や生活上の支障が持続する状態を指します。本問では、死別後の悲嘆の長期化ではなく、認知症などによって本人の存在の意味があいまいになる状態が中心です。

3.外的対象喪失
判定:誤り。
外的対象喪失は、愛着対象や重要な他者など外界に存在する対象を失うことを広く指す概念です。ただし、本問のように「身体的には存在するが心理的には不在」というあいまいさを特に表す概念としては不十分です。

4.あいまいな喪失
判定:最も適切。
あいまいな喪失は、喪失が明確に完結せず、存在と不在の境界があいまいなために苦痛が生じる状態を指します。認知症では、本人は身体的には存在していても、家族が以前のその人らしさを失ったように感じることがあり、本問の説明に合致します。

5.公認されない悲嘆
判定:誤り。
公認されない悲嘆は、社会的に悲嘆として認められにくい喪失に伴う悲嘆を指します。ペットロス、離婚、秘密にされていた関係の喪失などが例になります。本問でも家族の苦痛が周囲から理解されにくい場合はありますが、中心概念は身体的存在と心理的存在のずれを表すあいまいな喪失です。

覚えるポイント

  • P. Boss とくれば、まずあいまいな喪失を想起します。
  • 認知症では「身体的には存在、心理的には不在」と感じられることがあります。
  • あいまいな喪失は、死別のように区切りが明確でないため、家族支援で重要な視点になります。
  • 予期悲嘆は「これから起こる喪失への悲嘆」、複雑性悲嘆は「死別後に長期化する強い悲嘆」と整理します。

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