35Q55|第35回 介護福祉士国家試験 過去問
Aさん(60歳、男性)は、脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration)のため、物をつかもうとすると手が震え、起立時や歩行時に身体がふらつき、ろれつが回らないため発語が不明瞭である。 次のうち、Aさんの現在の症状に該当するものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 2
正答
2.運動失調
この問題のポイント
物をつかもうとすると手が震える、立位や歩行時に身体がふらつく、発語が不明瞭になるという症状は、小脳系の障害によって運動の協調性が低下する「運動失調」を示しています。
解説
脊髄小脳変性症は、小脳やその関連する神経経路などが徐々に障害され、運動失調を中心とする症状が現れる疾患群です。病型によって症状や進行の仕方には違いがあります。
運動失調とは、筋力だけの問題ではなく、複数の筋肉を適切な強さやタイミングで協調させることが難しくなり、目的とする運動を滑らかに行えない状態です。
Aさんの「物をつかもうとすると手が震える」という症状は、動作時、特に目標へ手を近づける場面で現れる企図振戦に当たります。「起立時や歩行時に身体がふらつく」ことは体幹失調や失調性歩行、「ろれつが回らず発語が不明瞭になる」ことは構音障害として説明できます。これらはいずれも運動失調の代表的な症状です。
運動麻痺は、筋力が低下して随意運動が困難になる状態です。関節拘縮は関節の動く範囲が制限された状態、筋萎縮は筋肉の量が減少した状態、筋固縮は他者が関節を動かしたときに持続的な抵抗を感じる状態です。Aさんに示された症状とは異なります。
ひっかけポイント
「手が震える」という言葉だけで、パーキンソン病にみられる安静時振戦と判断しないことが重要です。Aさんの震えは、物をつかもうとする動作時に現れており、ふらつきや構音障害も伴うため、運動失調として捉えます。
介護実践でのポイント
転倒を防ぐため、本人の希望を確認しながら動線、履物、手すり、歩行補助具などを調整し、急がせず安定した姿勢で動作できるようにします。発語が不明瞭でも、理解力や意思まで低下していると決めつけてはいけません。十分に話す時間を確保し、必要に応じて文字盤や筆談など、本人が選んだ方法を併用します。食事中のむせや嚥下の変化も観察し、変化があれば医療職やリハビリテーション専門職へ共有します。
選択肢の確認
1.運動麻痺{うんどうまひ}
誤りです。
運動麻痺は、神経系などの障害によって筋力や随意運動が低下する状態です。Aさんに示されているのは、筋力低下ではなく運動の協調性の低下です。
2.運動失調
正しいです。
企図振戦、立位・歩行時のふらつき、構音障害は、小脳系の障害による運動失調の代表的な症状です。
3.関節拘縮
誤りです。
関節拘縮は、筋肉や関節周囲組織の変化などにより、関節可動域が制限された状態です。Aさんのふらつきや企図振戦を説明するものではありません。
4.筋萎縮
誤りです。
筋萎縮は、筋肉の量や太さが減少した状態です。問題文には筋肉のやせや筋力低下は示されていません。
5.筋固縮
誤りです。
筋固縮は筋緊張が高まり、他者が関節を動かしたときに持続的な抵抗がみられる状態です。Aさんに示された運動の協調障害とは異なります。
覚えるポイント
- 脊髄小脳変性症では、運動失調が中心的な症状となる。
- 運動失調は、筋力だけではなく運動の協調性が低下した状態である。
- 目標へ手を近づけるときに現れる震えは企図振戦である。
- 立位や歩行時のふらつきは、体幹失調や失調性歩行として現れる。
- ろれつが回らない状態は、構音障害として現れることがある。
- 安静時振戦と企図振戦を区別する。
- 発語の不明瞭さだけで、理解力や意思決定能力まで低下していると判断しない。
- 転倒予防と意思疎通の方法を、本人と相談して調整する。