118F72|第118回 医師国家試験 過去問
検査所見:尿所見:淡黄色透明、蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。 血液所見:赤血球502万、Hb 15.1g/dL、Ht 48%、白血球12,400、血小板30万。 血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL、アルブミン4.6g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、直接ビリルビリン0.3mg/dL、AST 22U/L、ALT 18U/L、LD 195U/L(基準124~222)、ALP 100U/L(基準38~113)、**コリンエステラーゼ〈ChE〉40U/L**(基準240~486)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.5mg/dL、血糖240mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.1mEq/L、Cl 101mEq/L。CRP 11mg/dL。 心電図は洞性頻脈で ST-T 変化は認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比59%(臥位で撮影)。頭部単純CTで異常を認めない。 この患者のトキシドロームで最も考えられるのはどれか。
解答・解説を見る
正解: a
正解
a コリン作動性
判断の核心
この問題の決め手は、コリンエステラーゼ〈ChE〉40 U/L と著明に低下していること です。
基準値が 240〜486 U/L なので、極端な低下です。
ChE の著明低下は、有機リンやカルバメートによるコリンエステラーゼ阻害 を強く示唆します。
したがって、この患者のトキシドロームは コリン作動性 です。
症状との対応
この患者には、コリン作動性中毒に典型的な所見がそろっています。
- 縮瞳
- 著明な発汗
- 唾液分泌増加
- けいれん
- 呼吸障害
- 意識障害
つまり、検査値だけでなく、臨床像もコリン作動性症候群に合致しています。
どうしてこうなるのか
有機リン中毒では、アセチルコリンエステラーゼが阻害され、アセチルコリンが過剰に蓄積 します。
その結果、
- ムスカリン受容体刺激
- ニコチン受容体刺激
- 中枢神経刺激
が同時に起こります。
ムスカリン作用で出やすいもの
- 縮瞳
- 流涙
- 流涎
- 気道分泌増加
- 発汗
- 嘔吐、下痢
- 気管支攣縮
ニコチン作用で出やすいもの
- 筋線維束攣縮
- 筋力低下
- けいれん
中枢作用で出やすいもの
- 意識障害
- けいれん
- 呼吸中枢障害
各選択肢の検討
a コリン作動性
正解です。
ChE 著減、縮瞳、発汗、流涎、けいれん から最も典型的です。
b 交感神経興奮性
誤りです。
交感神経興奮性なら 散瞳、血圧上昇、頻脈、興奮 などが目立ちます。
この症例は 縮瞳 であり、合いません。
c 鎮静睡眠作用性
誤りです。
意識低下はあり得ますが、通常は 発汗や流涎、著明なコリン症状 は前面に出ません。
d オピオイド作動性
誤りです。
縮瞳は合いますが、典型は 呼吸抑制、意識低下、徐脈 です。
この症例のような 著明な発汗、分泌物増加、けいれん、ChE 低下 とは一致しません。
e ヒスタミン作用性
誤りです。
蕁麻疹、血管透過性亢進、気道浮腫などが中心であり、この症例像とは異なります。
ひっかけポイント
縮瞳だけを見て オピオイド を選ばせるひっかけに注意が必要です。
この問題では、縮瞳に加えて
- 発汗
- 唾液分泌増加
- けいれん
- ChE 著減
がそろっているので、コリン作動性 を選ぶべきです。
まとめ
この症例は 有機リン中毒を示唆する ChE 著明低下 と、典型的なコリン症状を示しています。
したがって最も考えられるトキシドロームは a コリン作動性 です。