115D75第115回 医師国家試験 過去問

内科系内分泌・代謝栄養・ビタミン・エネルギー代謝

67歳の男性。食欲不振、体重減少および全身倦怠感を主訴に来院した。35歳から日本酒5合/日を毎日飲酒していた。3か月前から食欲が徐々に低下し通常の摂食量の1/5以下となり、体重は3か月間で10kg減少した。1週前から全身倦怠感が出現したため受診した。身長172cm、体重60kg。体温36.7℃。脈拍100/分、整。血圧106/46mmHg。眼瞼結膜は軽度貧血様である。眼球結膜に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球272万、Hb 7.8g/dL、Ht 27%、白血球4,800、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.6g/dL、アルブミン3.2g/dL、総ビリルビン1.2mg/dL、直接ビリルビリン0.5mg/dL、AST 74U/L、ALT 118U/L、ALP 398U/L(基準115~359)、アミラーゼ268U/L(基準37~160)、尿素窒素10mg/dL、クレアチニン0.4mg/dL、血糖78mg/dL、総コレステロール189mg/dL、トリグリセリド98mg/dL、Na 132mEq/L、K 2.8mEq/L、Cl 92mEq/L、P 1.5mg/dL。水分摂取は可能だが、食事摂取は困難である。 静脈栄養として適切なのはどれか。

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正解: e

正解

e 5%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は加え、微量元素も加える。

解説

この症例で最も重要なのは、再栄養症候群の高リスク であることです。

高リスクと判断する根拠

  • 3か月で 10kg の体重減少
  • 食事摂取量が通常の 5分の1 以下
  • 低リン血症、P 1.5mg/dL
  • 低カリウム血症
  • 長期大量飲酒歴

この状態で、いきなり高濃度の糖質を多く入れると、インスリン分泌が増えてリン、カリウム、マグネシウムが細胞内へ移動し、
低リン血症や低K血症がさらに悪化して危険です。

まず必要な栄養投与の考え方

1. 糖質は控えめに始める

初期から 20%ブドウ糖 を入れるのは過剰です。
まずは 5%ブドウ糖含有電解質輸液 で、ゆっくり開始します。

2. ビタミンB1を必ず補う

大量飲酒歴と低栄養があるため、ビタミンB1欠乏 のリスクが高く、
糖質投与で Wernicke脳症 を誘発しうるため、ビタミンB1補充が必要です。

3. 微量元素も補う

長期低栄養では、亜鉛やセレンなどの 微量元素欠乏 も起こりやすく、補充が必要です。

各選択肢の検討

  • a 20%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は加え、微量元素も加える。
    誤りです。ビタミンB1と微量元素の考え方はよいですが、糖質負荷が強すぎる のが問題です。

  • b 20%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は加え、微量元素は含めない。
    誤りです。糖質過多であり、微量元素補充も欠けています。

  • c 20%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は含めず、微量元素は加える。
    誤りです。糖質過多に加え、ビタミンB1が欠けています。

  • d 20%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は含めず、微量元素も含めない。
    誤りです。最も危険な選択肢です。

  • e 5%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は加え、微量元素も加える。
    正しいです。再栄養症候群を避けながら慎重に開始する初期対応 として最も適切です。

  • f 5%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は加え、微量元素は含めない。
    誤りです。初期の糖質量は妥当ですが、長期低栄養例では微量元素補充も必要です。

  • g 5%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は含めず、微量元素は加える。
    誤りです。ビタミンB1欠乏を見落としてはいけません。

  • h 5%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は含めず、微量元素も含めない。
    誤りです。再栄養症候群とビタミンB1欠乏の両方に対して不十分です。

ひっかけポイント

この問題では、「栄養が足りないのだから高カロリーを早く入れる」と考えると誤ります。
低栄養が強いほど、最初はむしろ慎重に入れる のが重要です。

覚えるポイント

  • 低リン血症 がある低栄養患者では、まず 再栄養症候群 を考える。
  • 初期は 低濃度ブドウ糖でゆっくり 開始する。
  • ビタミンB1補充は必須
  • 長期低栄養では 微量元素補充 も忘れない。

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