115B48|第115回 医師国家試験 過去問
さらに医療面接と診察を進めた。 現病歴:頭痛は眼の奥が重く痛むようなものである。3か月前から無月経になっている。食欲も落ちており、体重は半年で3kg低下している。癌なのではないかと心配している。睡眠障害はない。3か月前から便秘が悪化している。 既往歴:特記すべきことはない。 生活歴:会社員。夫と子どもと3人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。 家族歴:特記すべきことはない。 現 症:意識は清明。身長153cm、体重48.2kg。脈拍72/分、整。血圧98/56mmHg。呼吸数16/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫を認めない。胸部では乳頭の圧迫で白色乳汁分泌を認める。腹部に異常を認めない。両耳側半盲を認める。 検査所見: 血液所見:赤血球357万、Hb 11.1g/dL、Ht 34%、白血球4,200、血小板18万。 血液生化学所見:AST21 U/L、ALT 14U/L、LD 146U/L(基準120~245)、尿素窒素15mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、血糖78mg/dL、Na 131mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L。 内分泌検査所見:ACTH 9pg/mg(基準60以下)、コルチゾール1.9μg/dL(基準5.2~12.6)、TSH 0.76μU/mL(基準0.500~5.00)、FT3 2.27pg/mL(基準2.30~4.30)、FT4 0.51ng/dL(基準0.90~1.70)、LH 0.3mIU/mL(基準1.8~7.6)、FSH 4.4mIU/mL(基準5.2~14.4)、エストラジオール<10pg/mL(基準11~230)、プロゲステロン0.2ng/mL(基準0.5以下)、プロラクチン198ng/mL(基準0.5以下)。 頭部造影MRIで下垂体腺腫を認める。 治療で誤っているのはどれか。
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正解: b
正解
b 発熱時は副腎皮質ステロイド補充を減量する。
解説
この症例は、
- 無月経
- 乳汁分泌
- プロラクチン高値
- 両耳側半盲
- MRIで下垂体腺腫
から、まず プロラクチノーマ を考えます。
さらに、
- コルチゾール低値
- FT4低値なのに TSH が不適切に低い
- LH、FSH 低値
を認めており、下垂体前葉機能低下症も合併しています。
このとき誤っているのは、発熱時に副腎皮質ステロイド補充を減量するという記載です。
なぜ b が誤りか
副腎不全患者では、発熱や感染、手術などのストレス時にはステロイド需要が増加します。
そのため、補充量は減らすのではなく増やすのが原則です。
これがいわゆる sick day rule です。
この症例で重要な治療の考え方
1.薬物療法で腫瘍縮小が期待できる
プロラクチノーマでは、ドパミン作動薬でプロラクチン低下と腫瘍縮小が期待できます。
したがって a は正しいです。
2.手術前には下垂体機能評価が必要
下垂体腫瘍では、手術の前にどのホルモンが低下しているかを把握する必要があります。
c は正しいです。
3.ホルモン補充は副腎皮質ステロイドから開始する
下垂体機能低下症で、甲状腺ホルモンと副腎皮質ホルモンの両方が不足しているときは、先に副腎皮質ステロイドを補充します。
甲状腺ホルモンを先に入れると代謝が上がり、副腎クリーゼを誘発しうるためです。
d は正しいです。
4.ステロイド開始後に尿崩症が目立つことがある
副腎皮質ホルモン欠乏があると、水排泄が低下して尿崩症が目立ちにくくなることがあります。
そのため、ステロイド補充後に潜在していた尿崩症が顕在化することがあり、e も正しいです。
各選択肢の整理
a 薬物療法で腫瘍の縮小が期待できる。
正しいです。プロラクチノーマではドパミン作動薬が有効です。b 発熱時は副腎皮質ステロイド補充を減量する。
誤りです。発熱時は増量が必要です。c 手術を行う場合、下垂体機能評価を事前に行う。
正しいです。d ホルモン補充は副腎皮質ステロイドから開始する。
正しいです。e 副腎皮質ステロイド補充開始後は尿崩症の出現に注意する。
正しいです。
ひっかけポイント
この問題では、甲状腺ホルモン低下が目立つので先にレボチロキシンを補充したくなるのが典型的なひっかけです。
しかし、実際には副腎不全を先に補正することが極めて重要です。
まとめ
この症例はプロラクチノーマに下垂体機能低下症を合併した状態です。
誤っているのは、発熱時に副腎皮質ステロイド補充を減量するという b です。