9AM71第9回 公認心理師国家試験 過去問

精神疾患とその治療-02 知的発達症・トゥレット・染色体疾患

15 歳の女子A、中学 3 年生。担任教師の勧めで、母親と共に教育相談センターに来談した。Aは小学生の頃から、テストの点は常に悪く、身支度に時間を要して遅刻が多かったが、明るい性格で、学校生活に問題はなかった。中学生になり、バレーボール部に所属した。Aは当初、フォーメーションの理解に苦労したが、優れた身体能力を活かし、チームに貢献した。高校でもバレーボールを続けることを希望している。一方で、部内で金銭の不適切な貸借が判明した際、Aだけが損をしていることに気付いていなかったことがある。全ての科目の成績は学年最下位付近で低迷が続いている。  Aの状態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。

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正解: 2

正答

2

この問題のポイント

この問題では、A の学業面、生活面、社会的判断の困難を総合して、軽度知的発達症として理解できるかが問われています。

A は小学生の頃から全般的に成績が低く、身支度に時間がかかり遅刻が多く、部活動ではフォーメーション理解に苦労しています。また、金銭の不適切な貸借で自分だけが損をしていることに気付けなかったという社会的判断の弱さも示されています。

解説

知的発達症では、知的機能の困難だけでなく、日常生活で必要となる適応機能の困難も重視します。

適応機能には、次のような領域があります。

  • 概念的領域:学習、読み書き、計算、時間や金銭の理解など
  • 社会的領域:対人関係、社会的判断、だまされやすさ、状況理解など
  • 実用的領域:身支度、生活管理、学校生活、仕事、金銭管理など

本事例では、A は明るく学校生活に大きな問題はなかった一方で、全科目の成績が学年最下位付近で低迷しています。これは特定の教科だけでなく、学習全般の困難を示しています。

また、身支度に時間がかかる、遅刻が多い、フォーメーションの理解に苦労する、金銭の不適切な貸借で自分の不利益に気付けないといった点は、実用的領域や社会的領域の適応機能の弱さを示唆します。

一方で、A には優れた身体能力があり、バレーボールでチームに貢献しています。軽度知的発達症では、すべての能力が低いわけではなく、得意な活動や強みがあることも重要です。

事例問題で見るポイント
知的発達症では、知能検査の数値だけでなく、学習、生活管理、対人関係、金銭理解、学校生活での適応を総合して考えます。

公認心理師としての注意点
A の強みであるバレーボールへの意欲や身体能力を大切にしながら、学習面、進路選択、金銭管理、生活スキルについて具体的な支援を考えることが重要です。

この段階では、心理検査や発達歴、学校での様子、家庭での生活機能を確認し、本人の自己理解と合理的配慮につなげていくことが求められます。

選択肢の確認

1.限局性学習症
判定:誤り。
限局性学習症は、読み、書き、計算など特定の学習領域に著しい困難がある状態です。A は全ての科目で成績が学年最下位付近で低迷しており、身支度や金銭判断など学習以外の適応面にも困難がみられます。特定領域に限られた学習困難としては説明しにくいため、最も適切ではありません。

2.軽度知的発達症
判定:最も適切。
軽度知的発達症では、知的機能と適応機能に困難がみられます。A は小学生の頃から学業全般が低迷し、身支度や時間管理、社会的判断、金銭面での理解にも困難が示されています。一方で、部活動では身体能力を活かして貢献できており、軽度知的発達症の理解として最も適切です。

3.高次脳機能障害
判定:誤り。
高次脳機能障害は、脳損傷後に記憶、注意、遂行機能、社会的行動などに障害が生じる状態です。本事例では、事故や脳疾患などの後天的な脳損傷の情報は示されておらず、小学生の頃から困難が続いています。したがって最も適切ではありません。

4.注意欠如多動症
判定:誤り。
注意欠如多動症では、不注意、多動性、衝動性が中心になります。A には遅刻やフォーメーション理解の困難がありますが、全科目の長期的な低迷や金銭面での社会的判断の弱さを含めて考えると、注意欠如多動症だけでは説明しにくく、軽度知的発達症がより適切です。

5.自閉スペクトラム症
判定:誤り。
自閉スペクトラム症では、社会的コミュニケーションの困難、対人相互作用の困難、限定された興味や反復行動、感覚の特徴などがみられます。本事例では、明るい性格で学校生活に問題はなかったとされており、自閉スペクトラム症に特徴的な対人コミュニケーションの質的困難は中心ではありません。

覚えるポイント

  • 軽度知的発達症では、知的機能と適応機能の両方を確認します。
  • 全般的な学業低迷、金銭理解の弱さ、生活管理の困難は重要な手がかりです。
  • 限局性学習症は、読み書き計算など特定領域の学習困難が中心です。
  • 支援では、本人の強みを活かしつつ、生活スキル、進路、合理的配慮を検討します。

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