9AM66|第9回 公認心理師国家試験 過去問
21 歳の女性A、大学生。半年ほど前、親しい友人Bから「ときどき、話している相手がAじゃないように感じる」と言われた。それ以来、Bとの関係が次第にぎくしゃくしてきたことが気になり、大学の学生相談室を訪れた。Aによると、以前、気が付くと見知らぬカフェで見覚えのない人と話しており、パニックになったことがある。その際、財布の中には立ち寄った覚えのない店のレシートが入っており、買い物リストの筆跡も自分とは異なっていたという。面談室では、声のトーンや話し方が別人のように急変する場面があったが、Aはそのことを後で説明されても思い出せず、混乱していた。 Aの病態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
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正解: 5
正答
5
この問題のポイント
この問題では、A にみられる同一性の交代と記憶の空白から、解離性同一症を考えることが求められています。
A は、気が付くと見知らぬカフェにいた、見覚えのない人と話していた、覚えのないレシートがあった、筆跡が自分と異なっていた、面談中に声のトーンや話し方が別人のように変化した、という特徴を示しています。
解説
解離性同一症は、複数の同一性状態が存在し、行動、記憶、意識、自己感、感情、知覚などに不連続性がみられる状態です。日常的な物忘れでは説明しにくい記憶の空白を伴うことがあります。
本事例では、A は自分では覚えていない行動の痕跡を経験しています。見知らぬカフェにいたこと、立ち寄った覚えのない店のレシート、筆跡の異なる買い物リストなどは、単なる忘れ物ではなく、記憶の連続性が途切れていることを示唆します。
また、面談室で声のトーンや話し方が別人のように急変し、そのことを後で説明されても思い出せないという点は、同一性状態の交代と、それに伴う健忘を考える重要な所見です。
事例問題で見るポイント
解離症では、記憶の空白、自己感の変化、周囲から見た人格の変化、現実感の変化、生活への支障を整理します。
公認心理師としての注意点
解離症が疑われる場合でも、神経疾患、物質使用、睡眠障害、精神病性障害などの可能性を除外するため、医療機関との連携が重要です。本人の混乱や恐怖を受け止め、安全感を確保しながら支援します。
本問では、記憶の空白だけでなく、別人のような話し方への変化がみられるため、解離性健忘よりも解離性同一症が最も適切です。
選択肢の確認
1.てんかん
判定:誤り。
てんかんでは、発作に伴う意識変容や記憶の欠落が生じることがあります。そのため医学的な鑑別は重要です。しかし本事例では、筆跡の違い、見知らぬ場所での会話、面談中の声や話し方の急変など、同一性状態の交代を示唆する情報が中心であり、病態理解としては解離性同一症が最も適切です。
2.解離性健忘
判定:誤り。
解離性健忘は、通常の物忘れでは説明できない重要な自伝的情報の想起困難を特徴とします。本事例にも健忘はみられますが、声のトーンや話し方が別人のように変化するなど、同一性の交代を示す所見があるため、解離性同一症の方が適切です。
3.統合失調症
判定:誤り。
統合失調症では、幻覚、妄想、思考のまとまりにくさ、陰性症状などがみられます。本事例では、幻聴や妄想よりも、記憶の空白と同一性状態の変化が中心です。そのため、統合失調症より解離性同一症が最も適切です。
4.一過性全健忘
判定:誤り。
一過性全健忘は、突然の前向性健忘を中心とし、通常は短時間で回復する一過性の記憶障害です。人格状態の変化や筆跡の違い、別人のような話し方の変化を説明する概念ではありません。
5.解離性同一症
判定:最も適切。
解離性同一症では、複数の同一性状態が存在し、行動や記憶に不連続性がみられます。A には、覚えのない場所や行動、筆跡の違い、面談中の別人のような話し方の急変、その後の健忘がみられるため、本問の病態理解として最も適切です。
覚えるポイント
- 解離性同一症では、同一性状態の交代と記憶の空白が重要です。
- 解離性健忘は、記憶の想起困難が中心で、同一性の交代までは必須ではありません。
- てんかんや一過性全健忘など、神経学的疾患との鑑別も重要です。
- 解離症の支援では、本人の混乱を受け止め、安全感を高め、医療機関と連携します。