115A067|第115回 歯科医師国家試験 過去問
矯正歯科治療中の口腔内写真 (別冊No. 23 )を別に示す。 上顎側切歯の根尖部遠心側歯根膜に生じるのはどれか。 2つ選べ。

解答・解説を見る
正解: d・e
正答
d、e
この問題のポイント
矯正力を受けた歯根膜では、圧迫側と牽引側で起こる反応が異なります。画像から歯の移動方向を読み、根尖部遠心側がどちら側になるかを判断します。
解説
写真では可撤式矯正装置の弾線が上顎側切歯に作用しています。この歯の移動では、上顎側切歯の根尖部遠心側は歯根が歯槽壁から離れる牽引側になります。
牽引側では、歯根膜腔が広がり、歯根膜線維が伸展します。血流は保たれ、線維芽細胞、骨芽細胞、セメント芽細胞などの活動が促されます。その結果、歯槽骨側では骨形成が進み、歯根表面では類セメント質の形成がみられることがあります。
一方、圧迫側では歯根膜が狭くなり、強い力では血流障害や硝子様変性が生じます。硝子様変性部を避けて、その深部から骨が吸収されるのが穿下性骨吸収です。
ひっかけポイント
血流障害、硝子様変性、穿下性骨吸収は圧迫側です。歯根膜線維の伸展と新生組織形成は牽引側です。
画像の確認
実画像では、左右大臼歯のバンドに連結された口蓋側ワイヤーから、上顎側切歯へ弾線が接して力を加える固定式装置がみられる。側切歯根尖の遠心側はこの力で牽引側となるため、歯根膜線維の伸展と類セメント質形成を選ぶ正答d・eを支える。
選択肢の確認
a.血流障害
誤り。
血流障害は、歯根膜が圧迫されて血管が狭窄・閉塞する圧迫側で起こります。根尖部遠心側は牽引側であるため該当しません。
b.硝子様変性
誤り。
硝子様変性は過大な矯正力により圧迫側歯根膜が無細胞性に変性した状態です。牽引側で生じる代表的変化ではありません。
c.穿下性骨吸収
誤り。
穿下性骨吸収は、強い圧迫で硝子様変性が生じた際に、その深部の骨髄側から破骨細胞が骨を吸収する現象です。圧迫側の変化です。
d.歯根膜線維の伸展
正しい。
牽引側では歯根と歯槽壁の距離が広がり、歯根膜線維が伸ばされます。これが細胞活性化と新生骨形成につながります。
e.類セメント質の形成
正しい。
牽引側ではセメント芽細胞の活動が保たれ、歯根表面に類セメント質が形成されることがあります。組織の修復・適応反応の一つです。
覚えるポイント
- 圧迫側:歯根膜狭窄、血流障害、硝子様変性、骨吸収。
- 牽引側:歯根膜線維伸展、血流維持、骨形成、類セメント質形成。
- 歯冠と根尖は傾斜移動では反対方向へ動くため、部位ごとに圧迫側・牽引側を判断します。