34Q72第34回 介護福祉士国家試験 過去問

こころとからだのしくみ発達と老化の理解

Aさん(87歳、女性、要介護3)は、2週間前に介護老人福祉施設に入所した。Aさんにはパーキンソン病(Parkinson disease)があり、入所後に転倒したことがあった。介護職員は頻繁に、「危ないから車いすに座っていてくださいね」と声をかけていた。Aさんは徐々に自分でできることも介護職員に依存し、着替えも手伝ってほしいと訴えるようになった。 Aさんに生じている適応(防衛)機制として、最も適切なものを1つ選びなさい。

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正解: 2

正答

2.退行

この問題のポイント

退行とは、不安や葛藤などに直面したときに、それまでより発達的に前の段階へ戻ったような、依存的・未熟な行動を示す防衛機制です。Aさんが、自分でできることまで職員に頼るようになった点が判断の手がかりです。

解説

防衛機制とは、不安、葛藤、欲求不満などから自分の心を守るために、多くは無意識に働く心理的な仕組みです。

Aさんは、施設への入所、パーキンソン病、転倒という不安を抱えています。さらに、介護職員から「危ないから車いすに座っていてくださいね」と繰り返し言われ、自分で行動する機会が減っています。その結果、それまで自分でできていた着替えまで職員に依存するようになりました。以前より依存的な行動様式へ戻ることは、退行に該当します。

この事例では、Aさんの心理だけを問題にしてはいけません。安全を優先する職員の声かけが、本人の能力を発揮する機会や自信を奪い、依存を強めた可能性があります。転倒を防ぐために一律に座位を求めるのではなく、パーキンソン病の症状、服薬の効果が現れる時間帯、起立・歩行能力、環境、履物などを評価し、安全にできる方法を本人と検討することが重要です。

ひっかけポイント

「職員に不満を示した」とは書かれていないため、攻撃ではありません。「自分でできることまで手伝ってほしいと訴える」という、依存性の高い段階へ戻った行動から退行を選びます。

介護実践でのポイント

過介助は、廃用や自信の低下、さらなる依存につながります。転倒リスクを評価したうえで、「どこまでなら自分でできるか」を本人と確認し、見守り、部分介助、福祉用具、環境調整を組み合わせて残存能力を生かします。

選択肢の確認

1.投影

誤りです。
投影は、自分の中にある認めがたい感情や欲求を、他者が持っているものとして捉える防衛機制です。Aさんが自分の感情を他者のものとして捉える場面は示されていません。

2.退行

正しいです。
退行は、不安や葛藤に直面したときに、以前より依存的・未熟な行動様式へ戻ることです。Aさんは、自分でできる着替えまで職員に頼るようになっています。

3.攻撃

誤りです。
攻撃は、欲求不満などを他者や物へ向けて表出する行動です。Aさんが怒鳴る、責める、暴力を振るうといった行動は示されていません。

4.抑圧

誤りです。
抑圧は、受け入れがたい感情、欲求、記憶などを無意識の領域へ押し込み、意識に上らないようにする防衛機制です。この事例の依存的な行動とは異なります。

5.昇華

誤りです。
昇華は、満たしにくい欲求や衝動を、芸術、仕事、スポーツ、社会貢献など社会的に受け入れられる活動へ置き換えることです。そのような行動は示されていません。

覚えるポイント

  • 退行は、不安に直面し、以前より依存的・未熟な行動へ戻ることである。
  • 投影は、自分の感情を相手のものと捉えることである。
  • 抑圧は、受け入れがたい内容を無意識へ押し込むことである。
  • 昇華は、欲求や衝動を社会的に価値のある活動へ向けることである。
  • 介護では、安全確保と自立支援を両立させ、過介助による依存を防ぐ。

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