診療放射線技師国家試験の出題傾向分析
診療放射線技師国家試験は、午前・午後あわせて200問を1日で解き切る、出題範囲の広さが最大の特徴です。放射線物理や計測といった理工系の内容から、撮影・検査・治療の臨床技術、さらに解剖・病理までが問われ、物理と医学の両輪が求められます。直近の第78回は受験者3,506人に対して合格者2,670人、合格率76.2%と、第77回の84.7%から8ポイント以上下がる厳しい結果でした。合格基準は総得点120点以上(約6割)に加えて「0点の試験科目が1科目以下」という条件があり、苦手科目の放置が命取りになる構造です。本記事では直近3回(第76〜78回)の全600問の分析をもとに、分野ごとの出題実態と対策を解説します。
合格率と合格基準
| 回次 | 実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 第78回 | 2026年 | 3,506 | 2,670 | 76.2% | |
| 第77回 | 2025年 | 3,729 | 3,159 | 84.7% | |
| 第76回 | 2024年 | 3,565 | 2,834 | 79.5% | |
| 第75回 | 2023年 | 3,224 | 2,805 | 87% | |
| 第74回 | 2022年 | 3,245 | 2,793 | 86.1% | |
| 第73回 | 2021年 | 2,953 | 2,177 | 73.7% | |
| 第72回 | 2020年 | 2,914 | 2,397 | 82.3% | |
| 第71回 | 2019年 | 3,202 | 2,537 | 79.2% | |
| 第70回 | 2018年 | 2,971 | 2,237 | 75.3% | |
| 第69回 | 2017年 | 2,939 | 2,511 | 85.4% |
受験者数・合格者数・合格率は各実施機関の公式発表値(出典)。合格基準の詳細・最新情報は必ず公式発表をご確認ください。
直近回(76回)で出題が変化した分野
直近回(76回)の総評
頻出分野ランキングと分野別対策
- 理工学・放射線科学毎回平均 35.7問(全体の18%)
直近3回で107問と全分野中最多で、毎回34〜37問と極めて安定しています。テーマ別では放射線計測装置(12問)、物質との相互作用(11問)、放射線の細胞に対する作用(11問)、放射線の生物学的効果と放射線治療(10問)が柱で、物理・計測・生物の3領域を横断的に問うのが特徴です。第76回AM80のような計測装置の問題は、電離箱・GM計数管・シンチレータといった検出器の原理と用途の対応を正確に覚えていれば確実に取れます。相互作用(光電効果・コンプトン散乱・電子対生成)のエネルギー依存性、直接作用と間接作用、酸素効果などは他分野の土台にもなるため、学習の最初期に固めるべき領域です。計算問題は解法パターンが限られるので、過去問で型を作っておきましょう。
- 基礎医学大要毎回平均 31問(全体の16%)
3回合計93問、毎回30〜32問とブレがほとんどない第2の柱です。頻出テーマは疾病と障害の基礎(15問)と細胞と組織(10問)で、第76回AM52のような疾患の基礎知識を問う出題が続いています。範囲は解剖・生理・病理・臨床医学と広大ですが、診療放射線技師国家試験では画像に関連する解剖(脈管・骨・臓器の位置関係)と、撮影・治療の対象になる疾患の基礎が優先度の高い領域です。診療画像検査学の「診療画像解剖」やエックス線撮影技術学の「X線画像解剖」と重なる部分が多いため、教科書の解剖図とX線・CT画像を対応させながら覚えると、複数分野の得点に同時に効きます。毎回30問という配点は0点科目回避の観点でも重要で、捨て科目にする選択肢はありません。
- 核医学診療技術学毎回平均 22.7問(全体の11%)
3回合計68問ですが、第76回の28問から第77回・第78回は各20問へと減少しました。それでも毎回20問は出題される主要分野です。テーマは臨床核医学検査学(21問)と核医学検査装置(17問)の2本柱で、第76回PM30のような臨床検査の問題と、AM27のようなガンマカメラ・SPECT・PET装置の問題がバランスよく出ます。学習のコツは、核種ごとに「物理的半減期・放出線種・エネルギー」と「標識薬剤・集積機序・対象臓器」をセットの表にして覚えることです。装置側はコリメータの種類と特性、収集・補正処理の流れを整理しておけば安定して得点できます。物理特性は理工学分野の知識と直結するため、同時期に学習すると効率的です。
- 診療画像検査学毎回平均 22.3問(全体の11%)
3回合計67問で、第76回26問→第77回21問→第78回20問と落ち着いてきましたが、依然毎回20問規模の主要分野です。テーマは診療画像検査(32問)と診療画像解剖(26問)に集中しており、CT・MRI・超音波の撮像原理とパラメータ、そして断層画像上の解剖の読み取りが問われます。第76回AM20〜23のように画像解剖の出題が連続することもあり、画像を含む問題が増えている近年の傾向(第78回は試験全体で36問)を支える分野の一つです。CTの再構成やMRIのシーケンスといった原理は理屈で理解し、断層解剖はCT・MRI画像を実際に見ながらレベルごとの構造物を覚える、という2段構えが有効です。造影検査の手順・禁忌も定番です。
- エックス線撮影技術学毎回平均 19.3問(全体の10%)
3回合計58問で、第76回16問→第77回21問→第78回21問と増加傾向にある分野です。テーマ別ではX線撮影技術が43問と全テーマ中2位の出題数を誇り、X線画像解剖も15問あります。第76回AM83のような撮影条件・ポジショニングの問題と、AM85のような画像解剖の問題が対になって出るのが典型です。部位ごとに「体位・入射点・入射角度・撮影距離」と「その画像で描出される解剖」をセットで整理するのが王道の学習法で、片方だけ覚えても得点効率が上がりません。撮影機器学と合わせるとX線撮影関連は近年毎回40問規模に達しており、この領域の完成度が合否を左右すると言っても過言ではありません。
- 放射線治療技術学毎回平均 19問(全体の10%)
3回合計57問、毎回18〜20問で安定しています。テーマは臨床放射線治療学(15問)、吸収線量の評価(15問)、放射線治療機器(14問)にきれいに三分されており、臨床・物理・装置をまんべんなく問う構成です。第76回AM43やPM38のような吸収線量評価の問題は計算を含むことが多く、線量計の校正や各種補正係数、深部量百分率などの定義を数式レベルで理解しておく必要があります。装置側はリニアックの構造とビーム生成の流れ、IMRTなどの照射技術が定番です。臨床側は主要ながんの標準的な照射法と処方線量の考え方を整理しておきましょう。物理計算は理工学・放射線科学の知識の応用でもあるため、両分野を続けて学習すると理解が深まります。
- エックス線撮影機器学毎回平均 16問(全体の8%)
3回合計48問ですが、第76回11問→第77回18問→第78回19問とほぼ倍増しており、直近の伸びが最も大きい分野です。テーマとしてはX線撮影機器が48問と全テーマ中最多で、第76回AM5〜8のように装置構成を問う問題が連続して出題されます。X線管の構造(陽極・フィラメント・焦点)、高電圧発生装置、グリッド・FPDなどの画像受像系、透視装置・CT装置のハードウェアが中心で、数値仕様や特性曲線を問う出題もあります。暗記だけでなく「なぜその構造なのか」を物理と結びつけて理解すると、応用問題にも対応できます。増加傾向が続く以上、旧配分のイメージで手薄にするのは危険です。過去問で頻出の装置パラメータを一覧化して確実に固めましょう。
- 放射線安全管理学毎回平均 10.7問(全体の5%)
頻出テーマは関係法規、個人の放射線被ばく管理、放射線防護の基本概念。直近の76回でも12問と安定して出題されています。 出題数は多くないため、頻出テーマに絞った対策で十分です。
分野別の出題数(全収録回の合計)
分野×回次のクロス集計
| 分野 | 76回 | 77回 | 78回 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 理工学・放射線科学 | 37 | 34 | 36 | 107 |
| 基礎医学大要 | 30 | 32 | 31 | 93 |
| 核医学診療技術学 | 28 | 20 | 20 | 68 |
| 診療画像検査学 | 26 | 21 | 20 | 67 |
| エックス線撮影技術学 | 16 | 21 | 21 | 58 |
| 放射線治療技術学 | 20 | 18 | 19 | 57 |
| エックス線撮影機器学 | 11 | 18 | 19 | 48 |
| 放射線安全管理学 | 12 | 10 | 10 | 32 |
| 医療画像情報学 | 10 | 10 | 10 | 30 |
| 医療安全管理学 | 4 | 9 | 8 | 21 |
| 画像工学 | 6 | 7 | 6 | 19 |
頻出テーマ TOP10
- エックス線撮影機器学X線撮影機器48問
- エックス線撮影技術学X線撮影技術43問
- 診療画像検査学診療画像検査32問
- 診療画像検査学診療画像解剖26問
- 核医学診療技術学臨床核医学検査学21問
- 核医学診療技術学核医学検査装置17問
- 医療画像情報学医療画像16問
- 放射線治療技術学臨床放射線治療学15問
- 放射線治療技術学吸収線量の評価15問
- 基礎医学大要疾病と障害の基礎15問
出題形式の統計(回次別)
| 回次 | 問題数 | 画像・図表つき | 5択 | 複数選択 |
|---|---|---|---|---|
| 76回 | 200 | 33問 (17%) | 200 | 27 |
| 77回 | 200 | 26問 (13%) | 200 | 32 |
| 78回 | 200 | 36問 (18%) | 200 | 20 |
画像・図表つき問題や複数選択形式の比率は、実際の解き味と時間配分に直結します。 比率が高い回次が続く場合は、画像問題への慣れを演習に組み込んでおくのが安全です。
合格から逆算する学習戦略
よくある質問
合格率はどのくらいですか?
直近の第78回は受験者3,506人・合格者2,670人で合格率76.2%でした。過去10回ではおおむね73〜87%の間で変動しており、最高は第75回の87.0%、最低は第73回の73.7%です。第77回84.7%から第78回76.2%へ大きく下がったように、年による難易度差が大きい試験なので、合格率が高い年を前提にした甘い見積もりは禁物です。
合格基準・ボーダーは?
1問1点・約200点満点(採点除外により年ごとに変動)で、総得点120点以上(約6割)かつ「0点の試験科目が1科目以下」であることが条件の絶対基準です。相対評価ではないため、周囲の出来に関係なく6割を取れば合格できます。ただし0点科目が2科目以上あると総得点を満たしても不合格になるため、捨て科目を作る戦略は取れません。
過去問は何年分解くべきですか?
直近3回(第76〜78回)の600問を分析すると、理工学・放射線科学が毎回34〜37問、基礎医学大要が毎回30〜32問など、分野構成は安定しており、過去問演習の効果が出やすい試験です。まず直近3回分を完全に理解することを最優先とし、余力に応じてさらに遡るのがよいでしょう。ただしエックス線撮影機器学が11問→19問に増えるなど配分の変化もあるため、古い回の配分をそのまま本番のイメージにしないよう注意してください。
最も配点が大きい分野は?
理工学・放射線科学で、直近3回合計107問、毎回34〜37問が出題されています。2位は基礎医学大要の93問(毎回30〜32問)で、この2分野だけで全体の3分の1を占めます。テーマ別に見るとX線撮影機器(48問)とX線撮影技術(43問)が最多で、撮影関連の機器学・技術学を合算すると近年は毎回40問規模に達します。
画像問題はどのくらい出ますか?
画像を含む問題は第76回33問、第77回26問、第78回36問と、直近では全体の1〜2割弱を占め、第78回で最多になりました。X線・CT・MRIの画像解剖や装置に関する画像の読み取りが中心です。また複数の選択肢を選ばせる形式は第76回27問・第77回32問・第78回20問で推移しており、消去法が使いにくいぶん正確な知識が要求されます。画像問題は文字の知識だけでは対応できないため、日頃から画像とセットで学習することが重要です。
回次ごとの収録問題数
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