医師国家試験の出題傾向分析
医師国家試験は毎回400問が出題され、必修問題の絶対基準と一般・臨床実地問題の相対基準を同時に満たすことが求められる総合力勝負の試験です。直近の第120回は受験者9,980名・合格者9,139名で合格率91.6%と、第119回の92.3%からわずかに低下したものの、例年どおり9割前後の水準で推移しています。ただし合格率の高さは易しさを意味しません。相対基準で競う以上、受験者の大半が正解する頻出分野の取りこぼしがそのまま不合格に直結します。本記事では直近6回・2,400問の出題データをもとに、分野別の出題実態と優先順位のつけ方を解説します。
合格率と合格基準
| 回次 | 実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 第120回 | 2026年 | 9,980 | 9,139 | 91.6% | |
| 第119回 | 2025年 | 10,282 | 9,486 | 92.3% | |
| 第118回 | 2024年 | 10,336 | 9,547 | 92.4% | |
| 第117回 | 2023年 | 10,293 | 9,432 | 91.6% | |
| 第116回 | 2022年 | 10,061 | 9,222 | 91.7% | |
| 第115回 | 2021年 | 9,910 | 9,058 | 91.4% | |
| 第114回 | 2020年 | 10,140 | 9,341 | 92.1% | |
| 第113回 | 2019年 | 10,146 | 9,029 | 89% | |
| 第112回 | 2018年 | 10,010 | 9,024 | 90.1% | |
| 第111回 | 2017年 | 9,618 | 8,533 | 88.7% |
受験者数・合格者数・合格率は各実施機関の公式発表値(出典)。合格基準の詳細・最新情報は必ず公式発表をご確認ください。
直近回(120回)の総評
頻出分野ランキングと分野別対策
- 内科系毎回平均 153.3問(全体の38%)
直近6回で920問と全体の約38%を占める最大分野で、毎回139〜169問が出題されます。第120回は162問と全問題の4割超に達しました。テーマ別では循環器168問、腎・泌尿器139問、感染症130問、内分泌・代謝120問、消化器内科108問、呼吸器103問、血液76問と、主要臓器別領域がまんべんなく問われます。第120回A3のような循環器の症例問題、A24のような感染症の問題まで、病歴・検査値から診断と初期対応を導く臨床実地形式が中心です。内科系だけで相対基準の得点の土台が決まるため、まず循環器・腎泌尿器・感染症の頻出3領域から固め、検査値の解釈と第一選択の治療を対で覚える学習が効率的です。ここを後回しにする戦略は成立しません。
- 総合診療・救急・ケア毎回平均 53.3問(全体の13%)
6回合計320問、毎回47〜58問と安定して出題される第2の分野です。内訳は救急・集中治療が112問で最多、老年医学64問、緩和ケア・在宅医療56問と続きます。第120回A26のような救急初期対応、C44のような高齢者診療が典型です。救急はバイタルサインと緊急度判断、気道・呼吸・循環の安定化手順など、判断の順序を問う問題が多く、知識の暗記だけでは対応できません。老年医学と緩和ケア・在宅医療は、高齢化を背景に毎回一定数が出続けており、意思決定支援や療養の場の選択といった、正解が一意に定まりにくいテーマの出題訓練が必要です。過去問で「なぜ他の選択肢が不適切か」まで言語化する練習が最も効きます。
- 小児・周産期・女性医学毎回平均 53.2問(全体の13%)
6回合計319問、毎回47〜59問が出題されます。テーマ別では産婦人科160問・小児科159問とほぼ同数で、この2領域だけで試験全体の上位3・4位を占める超頻出テーマです。第120回ではA11・A47のような産婦人科の症例問題、A18・A45のような小児科の問題が出題されました。産婦人科は妊娠週数ごとの管理と異常の鑑別、小児科は月齢・年齢ごとの発達と疾患の対応関係が軸になります。いずれも「正常を知らないと異常が判断できない」分野であり、成人内科の知識の流用が効かないため、独立した学習時間の確保が必須です。毎回50問前後という配点は外科系を大きく上回っており、苦手なまま残すには大きすぎる分野です。
- 脳・精神・感覚器・皮膚毎回平均 51.5問(全体の13%)
6回合計309問、毎回45〜64問が出題されます。第119回に64問と突出した後、第120回は51問に戻りました。内訳は精神科88問、脳神経内科66問、耳鼻咽喉科58問、皮膚科52問と、マイナー科目とされがちな領域の集合体ですが、合計すれば社会医学に匹敵する配点です。第120回A21のような精神科の症例問題、A7のような脳神経内科の問題が代表例です。精神科は診断基準と治療の使い分け、脳神経内科は病変部位と症候の対応が定番の切り口です。耳鼻咽喉科・皮膚科は画像・写真つきの出題が多く、典型像を見て即答できるかが問われます。各領域の頻出疾患を10〜20個に絞って確実に取る「広く浅く確実に」の戦略が合理的です。
- 社会医学・医療システム毎回平均 50.5問(全体の13%)
6回合計303問、毎回47〜59問と極めて安定した分野です。特筆すべきはテーマ別集計で、公衆衛生が185問と全テーマ中最多である点です。医療倫理・医療安全も85問と多く、第120回ではB2・B3のような公衆衛生の問題、B15・B33のような倫理・安全の問題が出題されました。臨床科目と異なり暗記中心で対策効果が出やすく、統計指標・保健医療制度・感染症法などの頻出項目は過去問の反復だけで得点が安定します。また倫理・安全は必修問題との親和性が高く、絶対基準80%の突破にも直結します。臨床の学習に疲れた時間帯に回すなど、学習リズムに組み込みやすい分野であり、直前期の伸びしろとして最後まで得点源にできます。
- 外科系毎回平均 31.5問(全体の8%)
6回合計189問で、毎回24〜41問と分野の中で最も振れ幅が大きいのが特徴です。第119回は41問でしたが第120回は25問に減少しました。内訳は消化器外科59問・整形外科55問が2本柱で、第120回A1・A10のような消化器外科の問題、A5・A34のような整形外科の問題が典型です。出題数が読みにくい分野ではありますが、消化器外科は内科の消化器108問と地続きであり、悪性腫瘍の進行度評価と術式選択をセットで学べば内科・外科の両方で得点できます。整形外科は外傷と変性疾患の典型例が中心で、画像所見との対応を押さえれば安定します。単独で深追いするより、内科系・救急の学習に統合して効率化するのが賢明です。
- 基礎・検査・法医学毎回平均 6.7問(全体の2%)
6回合計40問、毎回4〜9問と出題数は最小の分野です。第120回は6問でした。配点上の存在感は小さいものの、相対基準の試験では「ほぼ全員が取る問題」を落とすことこそ危険であり、この分野の基本問題はまさにそれに当たります。検査の原理や法医学の基礎知識は、臨床各科の学習過程で自然に触れる内容が大半を占めるため、独立した学習時間を大きく割く必要はありません。過去6回分の該当問題を一通り解き、問われ方のパターンを知っておけば十分です。逆に言えば、ここに時間を投資しても伸びる得点は最大でも数問分であり、内科系や小児・周産期に時間を回す判断基準として、分野別の配点感覚を持っておくことが大切です。
分野別の出題数(全収録回の合計)
分野×回次のクロス集計
| 分野 | 120回 | 119回 | 118回 | 117回 | 116回 | 115回 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 内科系 | 162 | 139 | 140 | 152 | 158 | 169 | 920 |
| 総合診療・救急・ケア | 55 | 47 | 52 | 54 | 58 | 54 | 320 |
| 小児・周産期・女性医学 | 53 | 56 | 52 | 59 | 47 | 52 | 319 |
| 脳・精神・感覚器・皮膚 | 51 | 64 | 50 | 48 | 51 | 45 | 309 |
| 社会医学・医療システム | 48 | 49 | 59 | 52 | 48 | 47 | 303 |
| 外科系 | 25 | 41 | 38 | 30 | 31 | 24 | 189 |
| 基礎・検査・法医学 | 6 | 4 | 9 | 5 | 7 | 9 | 40 |
頻出テーマ TOP10
- 社会医学・医療システム公衆衛生185問
- 内科系循環器168問
- 小児・周産期・女性医学産婦人科160問
- 小児・周産期・女性医学小児科159問
- 内科系腎・泌尿器139問
- 内科系感染症130問
- 内科系内分泌・代謝120問
- 総合診療・救急・ケア救急・集中治療112問
- 内科系消化器内科108問
- 内科系呼吸器103問
出題形式の統計(回次別)
| 回次 | 問題数 | 画像・図表つき | 5択 | 6択 | 8択 | 9択 | 20択 | 複数選択 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 120回 | 400 | 95問 (24%) | 399 | – | – | – | 1 | 31 |
| 119回 | 400 | 103問 (26%) | 400 | – | – | – | – | 40 |
| 118回 | 400 | 88問 (22%) | 399 | – | – | 1 | – | 40 |
| 117回 | 400 | 103問 (26%) | 398 | 1 | 1 | – | – | 53 |
| 116回 | 400 | 100問 (25%) | 399 | 1 | – | – | – | 61 |
| 115回 | 400 | 98問 (25%) | 399 | – | 1 | – | – | 59 |
画像・図表つき問題や複数選択形式の比率は、実際の解き味と時間配分に直結します。 比率が高い回次が続く場合は、画像問題への慣れを演習に組み込んでおくのが安全です。
合格から逆算する学習戦略
よくある質問
医師国家試験の合格率はどのくらいですか?
直近の第120回は受験者9,980名・合格者9,139名で合格率91.6%でした。過去10回では第111回の88.7%が最低、第118回の92.4%が最高で、直近6回はすべて91〜92%台に収まっています。9割前後で安定した試験ですが、逆に言えば受験者の大半が到達する水準に届かないと不合格になる相対評価の試験でもあり、頻出分野の標準的な問題を確実に取ることが最重要です。
合格基準・ボーダーはどうなっていますか?
3つの条件をすべて満たす必要があります。第一に必修問題で総得点の80%以上(第120回は200点満点中160点以上・絶対基準)。第二に必修以外の一般問題・臨床実地問題で、受験者の得点分布に応じて毎回設定される相対基準のボーダー以上(第120回は300点満点中224点以上)。第三に禁忌肢問題の選択が3問以下であることです。必修の8割は毎回固定なので、必修対策は早期から計画的に進める必要があります。
過去問は何年分解くべきですか?
本サイトでは直近6回・2,400問を収載しており、まずこの範囲を確実に仕上げることを推奨します。出題構成は6回を通じて毎回400問・内科系が最多という骨格が一貫しているため、6回分を分野別に解けば頻出テーマはほぼ網羅できます。進め方としては、最新の第120回を時間を計って通しで解いて現在地を測り、その後は分野別に遡って弱点を潰し、直前期にもう一度直近回を通す二段構えが効率的です。
最も配点が大きい分野はどこですか?
内科系です。直近6回の合計で920問と全2,400問の約38%を占め、毎回139〜169問が出題されます。第120回は162問で全体の4割を超えました。テーマ別でも循環器168問、腎・泌尿器139問、感染症130問、内分泌・代謝120問と内科系の領域が上位に並びます。なお単一テーマとして最多なのは社会医学・医療システムの公衆衛生で185問あり、内科系に次ぐ得点源として無視できません。
画像問題はどのくらい出題されますか?
直近6回では毎回88〜103問、第120回は95問と、全400問のおよそ4分の1が画像を含む問題です。X線・CT・心電図・病理像・皮膚写真など形式は多岐にわたり、画像を読めないと選択肢の検討に入れない問題も少なくありません。教科書の文章だけで学習を完結させず、過去問演習の段階から必ず画像を自分で読んでから解答する習慣をつけることが、臨床実地問題の得点安定に直結します。
回次ごとの収録問題数
本ページはコクシメイク収録の全問題データから自動集計しています。分野の分類は編集部の整理に基づくもので、 公式の出題基準とは異なる場合があります。演習は学習アプリから、問題の閲覧は医師国家試験のページからどうぞ。