120A34|第120回 医師国家試験 過去問
4歳の女児。左上肢を動かさないため母親に連れられ夜間救急外来を受診した。日中、祖父母と一緒にショッピングセンターに出かけた際に、急に駆け出そうとしたため祖父がつないでいた手を引っ張ったところ、急に泣き出し左上肢を動かさなくなった。指示に従って左手指を曲げることはできるが、左肩、左肘は動かそうとしない。 考えられる診断はどれか。
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正解: c
正解
c 肘内障
解説
この症例は、手を引っ張られた直後から上肢を使わなくなった幼児であり、典型的な肘内障です。
肘内障は、橈骨頭が輪状靱帯から部分的に逸脱し、輪状靱帯がはさみ込まれることで起こります。1〜6歳ごろに多く、突然手を引かれた後に腕を使わなくなるのが典型です。
この症例で肘内障を考える根拠
- 年齢が4歳
- 大人が手を引っ張った直後に発症
- 急に泣き出して、その後、上肢を動かさない
- 手指は動かせる
- しかし肩や肘は動かそうとしない
この機転は、国試でも非常に典型的です。
病態
幼児では橈骨頭が未発達で、輪状靱帯も比較的緩いため、前腕を引っ張る力で橈骨頭が抜けかかるような状態になります。
そのため、患児は通常、
- 腕をだらんと下げる
- 使いたがらない
- 強い変形はない
- 手指運動は保たれる
という所見を示します。
各選択肢の検討
a 上腕骨顆上骨折
誤りです。
小児に多い骨折ですが、転倒などの外傷機転が典型です。手を引っ張られたという機転からはまず肘内障を考えます。
b 正中神経麻痺
誤りです。
正中神経麻痺なら母指対立障害や手指のしびれなどが問題になります。この症例では手指は曲げられるとされており、典型的ではありません。
c 肘内障
正しいです。
幼児が腕を引っ張られた後に腕を使わなくなる、という最も典型的な病態です。
d 肘関節脱臼
誤りです。
小児ではまれで、より強い外傷機転を伴うことが多いです。肘の変形や著明な腫脹が前景に出やすく、この症例とは合いません。
e 腕神経叢損傷
誤りです。
腕神経叢損傷ではより広範な運動麻痺や感覚障害を伴います。出生時外傷や強い牽引外傷で問題になることが多く、今回の経過とは異なります。
治療のポイント
肘内障では、徒手整復が有効です。
代表的には、
- 回内法
- 回外屈曲法
で整復します。
整復後は、すぐに腕を使い始めることが多いです。
ひっかけポイント
この問題では、**「手を引っ張った」**という機転が最大の手がかりです。
骨折や神経麻痺を考えたくなっても、
- 幼児
- 牽引
- 急に腕を使わなくなった
なら、まず肘内障を選びます。
覚えるポイント
- 1〜6歳
- 手を引っ張られた後
- 腕を使わない
この3つがそろえば、肘内障をまず考えます。